■食べ放題が堪能できない店?
2人用と思われるムーディーな席に案内され、荷物を置くや否や料理台に駆け出した。
チーズにローストビーフにオムレツ・・・フランス万歳!
さすがは予約必須の人気店というだけあり、時間は正午前にもかかわらず、先客たちが既に食べ放題を楽しみ始めていた。
家族でいらしている方が多く、「若い家族とその親御さん」という組み合わせがほとんどである。これぞ高級ホテル。
「これから夫婦になるであろう男女とその親御さん」という組み合わせパターンもある。
特筆すべきは、「親御さん」と表現しているものの「母」の存在しか確認できない点である。
オッサンがいないのだ。
それに対し、オバチャンたちはノリノリだ。
張り切って着物でいらしている方もいらっしゃる。
フランスに吹くジャポニズムの風。クールジャパン。
しかし着物じゃたくさん食べられないだろうになあ。
いずれにせよ、彼らにとっての食べ放題タイムは気持ちの90%くらいを「大人の気遣い」に回さねばならず、なんだか気の毒だ。
7,000円もする食べ放題って、ただうまいものが食べられるだけの空間ではないのだなあ。
みんな大人である。
彼らがよき時間を過ごせるようお祈りいたすとともに、我は我の道を征きて候。
突撃だァァァ!
■オムレツが作れるパトロンがほしい
なんらかの工夫が凝らしてある野菜(家でも食べられそうなものは取らない)やサラダ、火の通ったおかずコーナーを駆け巡り、席と厨房を数回往復し、やっと1巡目の食卓ができあがった。
序盤から甘味を堪能するのが、食べ放題のセオリー。
今回も、おかず⇒甘味⇒おかず⇒甘味 のデブスパイラルを楽しんでいきたい。
時間はいまだ正午を回っておらず、誰もデザートエリアのまわりには寄りついていなかった。
さすがみんな、お育ちが良い。
されど、他人は他人、私は私だ。
雪が降ったばかりの白い大平原に足跡をつけるが如く、すべてのケーキを汚した爽快感は忘れない。
実演コーナーではシェフが提供してくれるローストビーフのサービスなどがあったが、目玉は「オムレツ」だった。
その場で中に入れる具も選ばせてくれ、ふわふわでとろとろ、出来立てのカスタマイズオムレツを楽しむことができる。
料理ができない者からすれば、調理する手つきだけで一見の価値ありである。
調理台で「キノコとホウレンソウ」を入れたオムレツを依頼するとともに、調理風景を撮影させてほしい旨を告げた。
「もちろん!」と気持ちよく応じてくれつつ、「失敗できないなあ」と微笑んでくれた。
うおおキュンとするぜ、これぞ7,000円のホスピタリティ。
iPhoneを構える私の前で溶き卵がフライパンに流し込まれた。
後を追って、すぐにキノコ、ホウレンソウが混ぜ込まれ、手際よく卵がまとめられていく。
きゅきゅっときれいなオムレツ型になり、白いお皿に乗っかった、とほぼ同時にケチャップが添えられた。
「おまたせしました!」
出来立ての美しいオムレツ。
料理上手な彼女や奥さんがほしくなる気持ちもわかる。
私も目の前のシェフを連れて帰りたいが、とにかく、オムレツを一刻も早く食べなければ。
食べログでも絶賛されていたフレンチトーストが近くに置かれていたので、そちらもついでに1枚皿に乗せ、自分の席に急いで向かった。
前傾姿勢で席に戻り、椅子に座るや否や、姿勢のよいウェイターさんがシャンパンを持ってやってきた。
そう、この食べ放題、1杯のシャンパンがついているのである。
あいにく名前を控え損ねてしまったが、おいしい。
昼から飲む酒が不味いはずない、という話もあるが、その舞台がグランドハイアットなのだから格別だ。
がぶがぶ飲んでしまいそうなので、水も注文。
「ミネラルウォーターと普通のお水と、いかがいたしましょう?」
I am Japaneseであり、お箸の国の人である。
水に対し、高いお金を払う文化はあいにく持ち合わせていない。
即答で後者をお願いしつつ、私の国際人への道、そしてタツヤカワゴエに入店する道は果てしなく遠いことを実感した。
さらに小さなバゲットが提供される。
よし、これでおかず汁を吸いまくって食べてやる。
そうこうしているうちにオムレツは余熱で半熟のとろみを失っていったと思われる。
しかしオムレツは余熱に負けることなく、中は程よく半熟のままだった。
大好きなホウレンソウとキノコがいっぱい。
心なしか、ケチャップもものすごくおいしい気がするが、こういう時に限って、「え?ハインツだけど?」ということになるので、あまり大きなことは言わないでおく。
とにかくうまい!出来立てのオムレツは人類を裏切らない。
噂のフレンチトーストは、食パンの耳の部分が切り落とされていた。
確かにあの部分があると歯ごたえが残ってしまうし、卵液が浸りにくい。
ただ、B級グルメファンとしてはそのあたりが愛おしく、卵が浸りきっていない耳の部分を食べるのがひとつの楽しみだったりもするので少々残念。
しかしなにより、A級の食べ放題に来ておきながらB級を求めている自分の舌・胃袋の安っぽさが嘆かわしい。
メープルシロップは敢えてかけずに食べたが、ほんのりとした甘みがあり、このままで十分。
しっとりしているのに外側がカリッとしていて、パンの耳などを求めた自分の愚かさを思い知った。
なんだこれは。超うまい。
卵を堪能し、次はサラダ系へ。