一風変わった中国郷土料理がいただける中華料理店「黒猫夜」。
銀座店の料理長・水岡さんが中国・雲南省を訪問されたということで、そこでの料理を再現する「雲南料理イベント」にお邪魔してきた。
雲南料理とは
雲南は中国南部の省で、隣は四川省。そしてベトナムやミャンマーにも接している(地図はこちら)。
複数の少数民族が暮らす地域ということもあり、ひと言では表現しがたい、いろいろな味わいがあるのが雲南料理の特徴。
温かい地域で、植物がよく育つらしい。キノコやプーアール茶、薬草などが名産だそうだ。市場では淡水魚を中心とした魚介やお肉も充実。
名物料理はライスヌードルの「米線(べいせん)」。その太さも様々で、細い物から平打ち、正方形っぽい麺まであるようだ。パスタにいろいろな形があるように、それだけ人々の生活に馴染んでいる炭水化物なのだろうな。
ウンナンズ17(この日の雲南料理一覧)
振る舞われたメニューはご覧の全17種。
- 滇味羊蹄~羊ひづめ雲南風
- 柠檬鸭~傣族風レモン鴨
- 野树花沙拉~樹の花のサラダ
- 酸辣蕨根粉~黒ワラビの和え物
- 虾剁生~エビカルパッチョフレッシュハーブ添え
- 酥红豆~サクサク小豆漬物炒め
- 香茅草烤羊腿、鶏~羊腿と鶏香草焼き
- 番茄喃咪烤茭白~焼きマコモ焼きトマトペースト添え
- 瓦焼臭豆腐~焼き発酵豆腐
- 鹿干巴蒸白菜~回族鹿ハム蒸
- 油浸雲南百薬~オカワカメのお浸し
- キクラゲとトリュフとエビの卵炒め
- 野生菌火锅~雲南キノコ鍋
- 酸湯鱼火锅~クエのトマト鍋
- 麻油米线~ライスヌードルゴマ油和え
- 铜锅焖饭~栗、芋の銅鍋炊き込み飯
- 桃胶金耳杏仁豆腐~桃樹液金きくらげコンポート杏仁
ほとんど、想像できないぞ・・・。
まずは飲み物を、ということで、せっかくなので名産品のビンテージプーアール茶をいただいた。
お茶というと、緑茶の茶摘みから想起される「茶畑」のイメージがあるけれど、そういうお茶っ葉は「安い」らしい。
高級プーアール茶は、古樹の葉を茶葉として使っているそうだ。なんと15回くらい、お茶が出るらしい。長く生きていると、タフになるんだな・・・。
注いだ瞬間に、いい香り。ひとくちすすると、身体の中にいい香りがふわっと広がっていく。
どんな料理にも合いそうだ。今日は食べまくるぞ。
その夜、銀座は雲南になった
ビュッフェ形式の雲南料理イベント。
開始時間の18時を過ぎたころ、続々と前菜料理が登場した。
1.滇味羊蹄~羊ひづめ雲南風
たっぷりの青唐辛子でスパイシーに。
2.柠檬鸭~傣族風ライム鴨
「傣族」はタイ族と読む。ライムの味付けって、たしかにアジアな感じだなあ。
そっとあしらわれた鴨首の存在感も、アジアな感じだなあ。
うっかり、カメラのピントもそちらに合ってしまった。
(鴨、いのちをありがとう、おいしかったよ!)
3.野树花沙拉~樹の花のサラダ
樹の花って何だったかな・・・取材力のなさを今日もまた反省。
おかか以上、ちりめんじゃこ未満の食感。
生春巻きやサンチュでくるっと巻いていただいてみたい。
4.酸辣蕨根粉~黒ワラビの和え物
春雨や白滝を思わせるようなトゥルトゥルプリプリの黒ワラビにびっくり。
5.虾剁生~エビカルパッチョフレッシュハーブ添え
エビに乗っている葉っぱは、ミント。エビミント。
チョコミントアイスをいただいたときに匹敵する驚きだ。
「歯磨き粉とチョコレートを一緒に食べてうまいわけないだろう」と思ったし、実際そんなに好きじゃないけれど、エビミントは違った。おいしかった。
エビのまろやかさと、鼻孔をスッと通る爽やかなミントの香り。なんだかまた、アジアの風を感じる。
みんなやたらとパクチーを贔屓するけれど、ミントもバジルも春菊も、香る葉っぱはどれもおいしいと思う。
お刺身とミントも、意外と合うのかもしれないな。わさびだって結局、「香る植物」だし(ざっくり分類)。
今度、イカソーメンにミントを乗せてみようかなあ。
6.酥红豆~サクサク小豆漬物炒め
これは!!小さな粒のなかで巻き起こる「さっくりホクホク」のドラマ!!
「漬物」って何に浸けていたんだろう。めちゃくちゃおいしい。ぼりぼりたべちゃう銀杏の罠(小豆だけど)が発動しそう。
でも駄目だ、ビュッフェ形式という魔の手に目がくらむようでは駄目なんだ・・・なんてったって、まだ6品。
このあと鍋(しかも2種類)があるし、炊き込みご飯だって、名物の米線だって待っているんだぞ!
こんな幸せな悩みごとなら、毎日でも歓迎するのに・・・。
7.香茅草烤羊腿、鶏~羊腿と鶏香草焼き
8.番茄喃咪烤茭白~焼きマコモ焼きトマトペースト添え
9.瓦焼臭豆腐~焼き発酵豆腐
自らに課した「待て」を全うしたところで、厨房からおみこし・・・じゃなかった、鶏肉・羊肉てんこ盛りの台が登場。
手前から、鶏肉、羊のモモ肉、マコモダケだ。見えないけれど、その奥に臭豆腐がある。
ピンボケは発酵臭に恐れおののいたから・・・というわけではないけれど、やはり独特な香り。でも、とろみのある食感とあいまって、病みつきになる。
目の前で水岡料理長にお肉を切っていただく。ボリューム満点のお肉に感激!
切っていただいたお肉とマコモダケは特製ソースにつけながらいただくのだが、このソースがすごかった。
左がトマト、右がニラミント。
そう聞いて後者ばかりが気になってしまった。
パクチー、ミント、レモングラスなども入っているとのことで、そんなの絶対においしいに決まっている!「香る葉っぱうまい説」が、ここでも立証されるのだ!
スパイスの効いたお肉と、ニラミントソース。こんな中華料理もあるんだなあ。羊のもも肉との相性が抜群だった。
さて、残されたトマトソース。
マコモダケで少し掬っていただいてみた。
・・・これ、おいしすぎる!!!
ニラミントもおいしかったけれど、これ、半端ない!トマトソースだけどトマトソースじゃない!なんというか・・・
ホカホカの白いごはんに乗せて食べたい!
干しエビ、エビ味噌、ニンニクなどと混ぜ合わせているという。
そりゃ、おいしいわけだ・・・。
思い出しただけでもヨダレがこみ上げてしまう。
みんながお肉のおかわりをするなか、私はトマトソースだけをめいっぱいおかわりした。
ソースをちびちび舐めながら、プーアール茶をすすればパラダイスだ。エンドレスで楽しめそう。貧乏くさくてごめんなさい。
10.鹿干巴蒸白菜~回族鹿ハム蒸
おいしさに目を見張った忘れられないお料理のひとつがこちら。
鹿肉、初体験。
鹿肉が好きなのか、干物になって旨みが凝縮していたからなのか、黒猫夜さんの味付けがすばらしいのか、もう、とにかくおいしかった。
喉の奥の方でフワっと広がる、お肉の旨み。
大皿に残った煮汁を全部飲み干したいくらいだ。
11.油浸雲南百薬~オカワカメのお浸し
こちらも初対面、オカワカメ。
名前にだまされたけれど、漢字のとおり「薬草」で、海藻ではない。
味付けのせいか、シャキシャキととても食べやすかった。おいしいなあ。
12.キクラゲとトリュフとエビの卵炒め
この見た目!テンションMAX!卵炒めには目がないんだ!
しかもプリプリのエビにきくらげに、分厚いトリュフ!!
うおお!
歯ごたえのある食感が楽しい。しあわせ。
12.包烧牛舌牛肝菌~牛舌とポルチーニのバナナ葉包み焼き
うかうかしていたら、もう大皿には牛タンがなかった・・・無念。
でも、ポルチーニ茸とソースの味が最高。
ここまでのお料理すべて、ソースがおいしすぎる。食パンなどで全てきれいにさらってしまいたいけれど、がまん。
13.野生菌火锅~雲南キノコ鍋
いよいよきた!キノコ鍋!!
金キクラゲにキヌガサダケなど、鍋に入っているキノコはなんと5種類だとか。
ごろごろ入った鶏肉に加え、キンカン(卵になる前の黄身)が入っているのを視認したときには目が潤んだ。うれしすぎる。大好物だ!
びろびろのキヌガサダケは、少しぬるっとしていて、コリコリとした歯ごたえもある。
スープを含ませながらドゥルっと吸い込み、初めてづくしの食感がたまらなかった。
14.酸湯鱼火锅~クエのトマト鍋
15.麻油米线~ライスヌードルゴマ油和え
こちらはたっぷり用意していただいた香草をふんだんに入れて、いただきます。
※パクチー、台湾バジル、ベトナムミント、取り放題!
さらに、お待ちかねの雲南名物ライスヌードル「米線(べいせん)」を入れて。
雲南省のライスヌードルは、発酵させたお米をつぶして作る。コシが強くておいしい!
16.铜锅焖饭~栗、芋の銅鍋炊き込み飯
だいぶおなかがいっぱいになったところで、大きな銅鍋で炊かれたごはんが登場。
この鍋に入っているだけでおいしそう・・・食べないわけにはいかない。
黄色が鮮やかなサツマイモと栗に加え、先ほど感動したばかりの鹿肉が入っていて、再会の喜びに震える・・・。鹿肉の出汁がごはんに染みこんでいて、何杯でも食べられそうだ。
ぱらっとしたジャスミンライスで炊かれているので、どんどんいただけてしまう。糖質制限なんて、今日はやめだ、やめだ!!
17.桃胶金耳杏仁豆腐~桃樹液金きくらげコンポート杏仁
ひとしきり感動し終えてからの、この杏仁豆腐。
最後の最後まで気合い十分すぎる豪華さだ。
デザートにキクラゲというのは違和感があったのだけど、いただいてみれば、つるっ、こりっ、とした食感がとってもいい。
濃い黄色のかたまりは、桃の樹液。貴重な食材だそうだ。
樹液というとハチミツのような、ドロッとしたイメージがあったのだが、いただいてみると、プルプルでモチモチ、まるでグミのよう。
おかわり、しました。
雲南で気分は上々
全体的に「ザ・中華料理」とは一線を画す内容で、キノコの出汁の味わいや、隣接するミャンマーやベトナムなどのスパイシーな味わいが一度に楽しめた。
日本人の口に合っているのかもなあ、なんて軽い感想を胸に抱いたが、実際の雲南料理は隣の四川省の影響も強く、ものすごく辛いのだとか。
いやはや、見事な調節ありがとうございました。すごくおいしかった。おいしすぎた。
※お肉切り分け中の水岡料理長。雲南の風をありがとうございました!最高でした。
今でも思い出される「目を見張るうまさ」といえば、お肉やマコモダケとともにいただいたトマトソースと、鹿肉。
トマトソースは瓶詰にして売っていただきたいほどにおいしかった。
鹿肉もあの旨みが忘れられなくて、鹿肉を出すお店をつい検索してしまう。(おすすめ情報があったらぜひ教えてください)
そして、キノコ鍋に入っていたキヌガサダケの見た目と食感も忘れられない。
今回は水岡料理長が雲南で購入したおいしいキノコがふんだんに使われていたが、実は「雲南キノコ鍋」、黒猫夜さんのレギュラーメニューにもなっている。
雲南料理以外にも、中国のいろいろな地方のお料理が楽しめてしまうのが黒猫夜さんの魅力!
一筋縄ではいかない絶品中華とキノコ鍋をいただきに、また近いうちに伺います。
※ランチも絶品!yamama48.hatenablog.com