群馬県みなかみ町へ、温泉ではなくピザを目的に訪問した。ピザのおいしさは前掲の記事に詰め込んだつもりだが、そこに収まらなかった想いを記しておきたい。水上観光を盛り上げようと頑張る方々の心意気に心打たれたのである。
水上駅があたたかい
※撮影:同行者有志
青春18きっぷを使い「SLみなかみ」で旅をした。高崎駅は階段や自販機までもがSL仕様となっていてびっくり。さらに車内ではアトラクションとしてスクラッチ大会が開催された。同行者一行、7名のうち2名がアタリ(私ははずれ)。缶バッジをいただいていた。ファン垂涎のシロモノなのだろう。ほかにもお子様車掌体験などの機会が設けられており、スタッフの皆さんの「みなかみ観光を盛り上げよう」という気持ちが伝わってきてほっこりしてしまった。
しかしこのほっこりアトラクション、まだまだ序の口だったのだ。
到着すると、駅の皆さんとみなかみ温泉イメージキャラクターの「おいでちゃん」が出迎えてくれた(冒頭写真参照)。出不精で旅行に行くことがほとんどないので、こういう「ザ・観光地」なおもてなしに感動してしまう。
▲謎の演奏家の姿も
水上駅はなかなか年季の入った建物だが、おもてなしの心に満ちた創意工夫が随所に施されていた。
売店も併設されている待合室。すべての椅子という椅子に敷かれた色とりどりの座布団を見よ!
これすべて、「利根商家庭クラブ」の手づくり座布団なのだ。みんなのお尻をふわっともてなしてくれる、この心遣い。
待合室の奥には、イメージキャラクター「おいでちゃん」像が。ボランティアグループで手作りしたものらしい。
この像の背後には地元の中学生たちの「水上の俳句」が展示されている。
中3男子の句「みなかみの 楽しみ方は 自分次第」に心打たれる。そう、水上に来たら温泉に入らなきゃいけないなんて決まりはないんだ。ピザだけ食べて帰ったっていいんだ。自分次第なんだ!
悔しいけれど「おいでちゃん」が好きになっている
記事冒頭からちょこちょこ登場しているみなかみ温泉イメージキャラクター・おいでちゃん。なんというか、なんともいえないキャラクターである。
彼女は「人」であり、動物や妖精の類ではない。ゆえに「ゆるキャラ」とも位置付けづらく、マスコットにして持ち歩きたくなるようなかわいらしさがないのだ。SLみなかみから下車した我々をあたたかく迎えてくれたものの、記念撮影はしなくてもいいかな、くらいに思っていた。
「思っていた」。そう、私は過去形で語らねばならないのだ。だって彼女のことが大好きだから。
彼女への好意に気付いたのは帰りのSLに乗る直前のことだった。電車に乗り込もうとする我々に「ありがとう、また来てね」の気持ちを全身で伝えてくれたのだ。
車両の外から、帰っていくお客さんの姿を見つけてはひとりひとりにご挨拶。
手を振って、
すごくおじぎ。
ひとりひとりに手を振って、おじぎ。それをひたすらに繰り返すおいでちゃん。なんというおもてなしの心……ああ、古き良き観光地でのお見送りに心ふるえる。私はおいでちゃんのことがすっかり好きになっていた。
ところでこの写真は自分で撮りました、見ているとなんだか涙が出てきちゃう……。
駅の皆さんは最後の最後まで見送ってくれた。あたたかい。また来たくなる。
肝心のおいでちゃんに目線が入ってしまった。ごめん、おいでちゃん。また会いに来る。
がんばりきれていない水上タウンもまた良し
SLの皆さんや駅の方々、ピザ屋さんなど、温かいおもてなしに感動する一方で、「過去に輝いた町」としての水上温泉郷がも体感してきた。
全盛期にはこんな大きなタウンマップもあったのに、いまやどれだけのお店が残っているのでしょうか。
そんななかでも今なお現役のお店というのは、やはりタダモノではないオーラが漂うもの。
駅からピザ屋さんに向かう途中にあった衣類・雑貨屋さん。
「夏の洋服シリーズ」。いいぞ。
シリーズ構成員は「五分袖・半袖・ノスリーブ」である。ノースリーブじゃないんかい、と笑ったあなた、音読してごらんなさい。
「五分袖・半袖・ノスリーブ」
夏の洋服はビートを刻むのだ。
続きましては「リツク」。
写真には小さく、ひらがなバージョンの「りつく」も写りこんでいた。とてもあたたかい気持ちになる。
居酒屋さんの看板もイケている。全品400円とは、なかなかお手頃。
それにしても、左側の紙に書かれた「安いび」って、なんだ?
一歩引いて改めて読んでみると
巧みに横書きと縦書きがミクスチャーされていることがわかった。いちばん下は「占いあそび」だったのか。タロットなのか四柱推命なのか、内容は不明。いや、それより中段の「安い、早い、美しい、たのしい」が謎だ。「美しい」とはこれ如何に……。
あと、忘れちゃいけないのがスナックの屋号チェック。観光地のスナックは新旧問わず素敵な看板であふれている。現役のお店かどうかは怪しいところだが、「翔」と「コロポックル」、いい味出している。
水上にも公会堂があるんだぜ。
また水上に行きたい
次の通過時間を案内するパネル。手作業で動かしているのか…と思うとまた心があたたまってしまう。駅員さんイラストもたまんないな。
次は温泉目的で訪れよう。その際にはやはり「居酒屋 あんどう」さんへ伺わねばなるまい。占いあそび、そして「美しさ」をこの目におさめたい。