著名人に密着取材するテレビ番組などで、「思い出の飲食店」紹介シーンにしばしば遭遇する。
紹介されるお店の多くは、「辛かったときを支えてくれた飲食店」だ。
部活帰りに・・・とか、劇団のメンバーたちと・・・とか、売れなかったときに支えてもらって・・・とか。
私にとっての思い出のお店というと、いくつかあるなかのひとつに、中国ラーメン店の「揚州商人赤坂店」がある。
ご多分に漏れず、新卒入社した会社で体力だけで働いていたころ、よくお世話になっていた。
お昼もよくいただいていたのだが、思い出すのは深夜真っ只中のことばかり。
連日の深夜残業で弱ったとき、朝4時すぎまで煌々と輝いている店頭のライトがうれしかったなあ。
ラーメンといっても、いわゆる「チャーシュー・煮玉子・豚骨スープ」ではなく、さらさらっといただけるやさしいお味のラーメンが多い。
よく食べていたのは「野菜ラーメン」「トマ玉ラーメン」だったかな。
あたたかいラーメンに元気をもらい、タクシーで帰って1~2時間寝て出勤、なんて日もあったなあ・・・。
満を持しての「魚」のラーメン
先日、揚州商人さんから、ご縁あって新作試食会にお招きいただいた。
※新橋店に伺った
大好きなのに、あんなに通っていたのに、転職して深夜残業がなくなってからというもの、すっかりご無沙汰してしまっていたことに気づく。
(糖質制限ダイエットなんかも、やっちゃってたしなあ)
懐かしい想いとともにいただいたのは、3月1日から販売開始される「揚州塩魚ラーメン」(850円)。
あっさりとやさしい塩味のラーメンだ。
麺の上に乗っているのは真鱈のフリット。スケソウダラじゃないんだぞ。
そういえば、思い出す限り、揚州商人さんで魚のラーメンを見たことがない。
伺ってみると、ここ10年は提供していなかったとのことだった。
注文が入ってからお店で揚げているというフリットは、真っ先に食べるとほんのり「サクッと」食感が味わえる。
ぷりっとした身が、ケンタッキーのフライドフィッシュとは似て(もいないけど)非なるものだということを口の中で主張してくる。
うまい、この時点でうまいよ・・・。
白髪ねぎと一緒にいただくのもまた格別だった。
見た目にもやさしいスープは、中国南方に伝わる塩漬け乾燥魚・「ハムユイ」のスープを再現しているという。
魚のうま味が活かされているのか、塩分のトゲトゲ感がなく、まろやかな味わい。
これ、社会人2~3年目の私に食べさせてあげたい・・・。
風邪をひいたときにお母さんが作ってくれた玉子おじやのようなやさしさを感じる。
深夜のラーメンという罪悪感を忘れて、夢中で啜ってため息をつきそうだ。
ほっとして、涙を流していたかもしれぬ。
いつまでもレンゲで啜っていたくなる・・・が、そういうわけにもいかなかった。
揚州商人のラーメンは麺の太さを選ぶことができるのだが、さっぱり系のスープにおすすめ、ということで、この日は1番細い「柳麺」をいただいたのだ。
すごく細いので、ちょっと放っておくとあっという間に伸びてしまう。
真鱈をひとつ、「サクッと」を感じられるうちにいただいて、そのあとは即刻柳麺に集中するのがよさそうだ。
試食会では、デザートに杏仁豆腐までいただいてしまった。
その名も「夢ごこち杏仁豆腐」(390円)。
うわー、これも懐かしい。変わっていないんだ。先輩とよく食べていたっけなあ。
フルーツポンチなどいれず、杏仁豆腐の豆腐部分で直球勝負してくるところが好きだった。寒天のぷるるん感が少なく、舌と上顎でつぶしてザラッと感が味わえるような濃厚なデザート。
変わらず、おいしいままだ。
「揚州商人」の魅力を再認識
久々に訪れた揚州商人さん。
新メニューの「揚州塩魚ラーメン」が絶品だったのは間違いないが、それ以上に、「やっぱり、揚州、好き!」の気持ちがどんどん蘇ってきたことのほうが大きかった。
揚州商人さんの大好きなところはたくさんあるけれど、1番は「選べる麺」。
特に、太麺の「刀切麺」が大好きだった。(そればかり選んで食べていたので、柳麺をいただいたのはこの試食会が初めてだったかも)
中国の揚州は、刃物の名産地。
刀を使う麺といえば、麺の記事を削る「刀削麺」が有名だが、私は刀切麺のほうが好き。前者は麺の太さがまちまちで、薄く削れてしまったものはスープのなかですぐ溶けてしまい、カタ麺好きとしてはそれが嘆かわしくてならないのだ。
その点、刀切麺は均一の太さなので心配なし。いつまでもコシのある食感が楽しめる。
麺以外の「揚州LOVE」ポイントといえば、各席に備え付けられたジャスミンティー。
お冷はなく、各自セルフサービスでジャスミンティーをいただく。
こってりラーメンや餃子をいただいても、このジャスミンティーがあればさっぱり。
ポットから好きなだけいただけるのもうれしい。
どんぶりの上に、中華料理を
せっかくの試食会なので、かねてから気になっていたことをスタッフの方に聞いてみることにした。「日本のラーメンとの違いは何か」である。
「日本のラーメンは、スープがメインで、具はシンプルですよね。
揚州商人では、”ラーメンどんぶりの上で中華料理を表現する”ことをコンセプトにしています」
との回答をいただき、なるほど。
大好きだった野菜ラーメンも、トマ玉ラーメンも、具がたっぷり乗っていた。
あれは中華料理の再現だったんだ。
ただでさえラーメンの種類が豊富であるにもかかわらず、代表の方が足しげく中国・揚州に通い、本場の中華料理を麺の上で再現しようとしているのだそうだ。
だから、いつ来ても飽きない。
苦しいときを支えてくれた飲食店って、偉大だな。
変わらない懐かしさを感じながら、当時と今を比較してニヤニヤしたりして。
相変わらずおいしさに、幸せいっぱい。
昔も今も、どんどん新たなメニューを提供し、チャレンジを続けている揚州商人さん。
あのころと比べて、私はどうかなあ。
あのときのように、わき目もふらずに仕事にまい進、できてるかなあ・・・。
過去の自分をがっかりさせないようにしないとなあ・・・。
最寄りのお店
こちらからチェックを(東京・神奈川・千葉・埼玉)。
さらに4月8日には、新店OPENとのこと。
秋葉原UDX内のフードコート「秋葉原拉麺劇場」に出店するそうだ。
揚州商人さんにとっては初めてのフードコート出店とのことだし、奇しくも私の誕生日と同じなので、ぜひとも訪れなければ。
ごちそうさまでした。