都内に3店、そして蓼科と大阪に1店ずつ、計5店で展開しているインド料理の店、ナタラジ。
「自然派インドレストラン」とのことで、店頭の看板ではそのヘルシーさを強くアピールしている。
※銀座店の様子。都内には他、青山店、荻窪店がある
自然派って、何。
「自然派ワイン」なんて言葉もあるが、この派閥、かねてより謎の存在だった。
自然派でからだにやさしいと訴えながらも「カレー食べ放題」というのは、どうも身体にやさしくない気がする。
店の真意を確かめるべく、自然派なカレー食べ放題に突入いたす。
■菜食カレー食べ放題!その全貌
銀座店はビルの8~9Fに入居している。
2フロアを使用していることに驚くが、昼時は8Fが食べ放題ランチ、9Fが通常のランチと、提供されるものが異なっている。
暖色の照明と水のせせらぎ・・・まるで宮殿だ。
店内のホール担当スタッフの方は女性2名。
なったことはないが、気分はマハラジャである。
各席のテーブルも広く、なかなか居心地がよい。
客層もさまざまで、13時過ぎの訪問だったが、私の入店後には順番待ちのお客さんが出るほど盛況であった。
店内中央の食べ物ゾーンはきわめてシンプルな構成。
サラダがあって、
ナン(通常のものと、小松菜が練り込まれているものの2種)とごはんがあって、
カレーが4種あって、
デザートと温かい飲み物がある。
これをひと通り取ってくると、こんなかんじ。
ナンはペッタンコで、その外観および冷めてしまっていることにガッカリしていたのだが、見た目とは裏腹にモチモチとしていておいしかった。
ごはんは一応黄色く、サフランライスを気取っているが、こちらはあくまで見かけ勝負な印象。
実際に食べてみるとサフラン感ゼロで、「黄色い白米(なんのこっちゃ)」でしかなかった。
炭水化物はナンメインで攻めていきたいところだ。
さて、日替わりのカレーは4種。
私が遭遇できた4種は下記のとおり。
特筆すべきはいちばん手前の「ナタラジ・きのこ」である。
山のきのことグルテンミート入り。
ミート・・・?
菜食レストランなのに、ミート?
■グルテン 目がテン びっくり仰天
カレー鍋にはごろんごろんとグルテンミートなるものが入っていた。
いいのか、これで。
ミート、大丈夫なのか。
そんなことを思いつつも、肉好きとしてはうれしい限り。
得体のしれない肉だが、とりあえず目いっぱいお皿に盛り込んだ。
・・・そう、恥ずかしながら私はこの肉の正体を知らなかった。
手元のスマートフォンで調べれば済むことなのだが、
アイドル「ああ、おいしかった!」
司会者「皆さんが召し上がったお肉、実は意外なものなんです・・・」
アイドル「エッ!」
司会者「さあ、みなさんが召し上がったものは何だったでしょーうか!」
店のシェフ風の人が出てきて、
(SE:ババン!)
箱のなかから食材を取り出す
「キャーーーーーーーーーーーーーーーーー!」
響き渡るアイドルの悲鳴
「そうです、ご覧のとおり、ワニだったんです!」
ワニの干物を笑顔で持ち上げるイケメンシェフ。
(ワニの干物なんてものがあるのかどうかは知らない)
・・・という日曜の午後早めの時間帯にやっていそうな食番組の出演者ごっこを楽しみたい気分だったので、ここは敢えて調べずに、「グルテンミート」なるものを食すことにした。
さあ、どうしよう。
実はワニは先日いただいたばかりで、シェフの腕の良さのおかげで、とてもおいしく食べることができた。
というわけで、その程度では驚けない。
そもそも、菜食レストランなので動物であるはずがないのだ。
「実はダンボールでした!」
だったら驚くなあ、さすがに。
いや、でもおいしかったら、その正体がなんであろうと満足だ。
「人は見かけじゃないのよ、中身なのよ」ってよく言うじゃあないか。
スプーンで肉(?)のかたまりを持ち上げる。
カレールーを纏っていることもあり、見た目は牛肉そのものだ。
パクっと、ひとくち。
うーん・・・
これは・・・
ものすごくおいしい。
とにかくジューシーだ。
噛むと、じゅわっと肉(ではない何かの)汁が溢れてくる。
カレー自体は中辛とのことだが、それほど強い辛さではないので、辛い物が不得手な私でもおいしくいただけた。
肉(?)と一緒に入っているしめじやズッキーニも、控え目ながらいい味を出している。
ズッキーニが夏を連れてきてくれた。
それにしてもグルテンミート、うまい。
かたまりが大きいので、噛んだときのジューシー感がとてもよく活かされている。
これで正体が段ボールだったら、私はもう、世の段ボールさんたちに頭が上がらない。
ここまで堪能すれば十分だ。
おまちかねの答え合わせタイムである。
(グルテンミートの正体をご存じの方、ここまでのくだらない流れ・・・お付き合いありがとうございました!)
■グルテンミートとは
以下、Wikipediaより
グルテンミート(gluten meat)とは、グルテンを主原料とした加工食品である。日本国外ではセイタン(seitan)呼び名の方が一般的である。グルテンは、水で練った小麦粉に含まれるタンパク質の一種。
小麦粉に水と少量の塩を加えて捏ね、寝かせたあと水洗いして余分なデンプン粉を流し落とすと、残ったゴム状のグルテンの塊が得られる。これを適当な大きさにちぎり、醤油・各種ソース等の煮汁で下味をつけたものがセイタンである。下味をつけたセイタンは、さらに様々な調理に用いられる。
セイタンは主として、ベジタリアンやマクロビオティックのような穀菜主義、あるいはアレルギーやカロリー制限による食餌療法において、肉の代用品に利用される。
正体、小麦粉!!!
驚きというか、感動。
小麦粉でそんなことができるなんて。
そういや「グルテン」って聞いたことあるな・・・と思ったら「お麩」だった。
あれがどうやったら、こんなにもジューシーなお肉もどきになるんだろうか。
シェフの腕、恐るべし。
グルテンミートが入っている「ナタラジ・きのこ」。
このあと2回おかわりをした。
ちなみにナタラジではお皿は大切に使いまわすことを推奨しており、使用後のお皿はそれほど頻繁に下げてくれないので、きれいに食べることに留意していきたい。
■グルテンミート以外も、もちろんおいしい
つい、感動のあまり「ナタラジ・きのこ」ばかりをおかわりしてしまったが、その他の豆カレー類もおいしい。
ルーは全体的にさらっとしていて、これは確かに身体にやさしいのかもしれぬ。
唯一の甘口カレー「ナブラタン・コルマ(9種の野菜と果物、ナッツ入り)」も、「ナタラジ・きのこ」に次ぐおいしさだった。
食感はサラサラながら、クリーミー。
お肉はないけれど、その分たくさんの野菜が入っていて、食べごたえも抜群だ。
9種の内訳、いくらか失念してしまったのだが、サツマイモのようなものが入っていたと記憶している。
さらに注目すべきは「パイナップル」。
ほどよい甘酸っぱさの正体はこれか、と思いながらも切なくなってしまう。
代表的料理は酢豚であると思われるが、パイナップル氏はこんなにもいい仕事をしているのに、みんなに嫌われがち。
エキスだけ料理に提供し、みんなのお皿の片隅に追いやられ、ごみ箱行きのケースも多々あるだろう。
かつて、私も酢豚のパイナップルをじゃがいもだと信じ込んで食し、がっかりした経験があるので、食事中にパイナップルに遭遇すると申し訳なくなる。
大丈夫、今日もいい仕事してるよ・・・!
さらに注目は、デザートの「キール」。
ライスをミルクで甘く煮込んだレーズン、カシューナッツ入りデザート
とのこと。
タピオカミルクのような、甘みの強いデザートだった。
ライス成分は少ないようで、全体的にこちらもサラサラとした食感だ。
飲むには、ちょっと甘すぎる。
甘すぎるなら、中和してしまえばいいじゃない!
ということでこの度ご提案したいお料理はこちら。
キール ~天然酵母ナンを添えて~
我ながら大満足の組み合わせ!
キールがサラサラしているので、ナンにサッと浸みわたるのだ。
そんなナンをパクッと食べれば、口の中にキール汁がじんわり。
あまりにも気に入ったので、こうしてくれる!
かき混ぜてやる!
見た目からは信じがたいかもしれないが、これが大正解。
大満足のデザートタイムだった。
■菜食主義の方も安心の食べ放題
この食べ放題、税込1,130円(90分)というのはかなり良心的だ。
大変居心地がよいのだが、コーヒーカップが非常に小さい点が玉にキズだろうか。
自然派であることや、身体へのやさしさを強く主張するには訳があり、1989年のオープン当時、「日本初の菜食インド料理レストラン」だったそうなのだ。
今やベジタリアンの方に遭遇する機会も増えてきたが、当時はそういうレストランも少なかったことだろう。
デザートのキールが置かれているそばには、こんな札も。
ビーガンとは、肉・魚のみならず酪農製品についても摂取しない菜食主義を指すそうである。
キールには牛乳がふんだんに使用されているため、ビーガンの方にとってはNG食になるというわけだ。
開店当初から、店のコンセプトを変えずにがんばっているんだなあ。
工夫の末の「グルテンミート」も大量摂取すれば身体へのやさしさもなにも台無しだが、この日も調子に乗って大いに食べ、ヘルシーでもなんでもなく、いたってヘヴィな昼食を終えたのだった。
いやはや、本当においしかった。ラブ・小麦粉。
ごちそうさまでした!