※残念ながら閉店してしまったようです(2019年3月30日追記)※
2007年前後、ブームをキャッチキャッチした存在といえば、ルー大柴氏である。
※ご参考
「ナウと昔はディファレント」、ルー大柴の英語混じりブログが人気。 | Narinari.com
彼が放つカタカナ英語交じりの言語は「ルー語」と称され、2007年の流行語大賞にノミネート。
ちなみに、かの有名な「別に」も同年のノミネート語である。
そんな彼に惹かれるファンは「ルーマニア」と呼ばれ、私もその1人であった。
サイン会に赴きファンレターを渡し、彼のブログをリードしながら、うまくいかないジョブサーチアクティビティ(就活)に立ち向かって今に至る。
そういうわけで、都内唯一のルーマニア料理店、その名も「ルーマニア」にお邪魔してきた。
※この本に「with LOVE」と書いてもらった。うれしかった。
(以下、ルー大柴さんとは関係のない、黒海に面した美しい国ルーマニアのお料理の話です)
■電車を降りたら5分でルーマニア
中野坂上駅A1出口から徒歩1分。
交番の左にある、周囲とは一線を画す雰囲気を放つのが「ルーマニア」だ。
※茂みの奥にはドラキュラとコマネチの世界が!(なけなしのルーマニア知識)
店頭のパネルには、遠目に見ても色鮮やかな料理写真が並ぶ。
感じるぞ、異国の風。
風の主(シェフ)はこちらのお2人のようだ。
料理に向けてぎこちなく差し出されている右手、明らかにカメラ慣れしていない堅い表情に、職人らしさを感じる。
さらに視線をずらしてみれば
8月に入ってもなお、父の日フェアが熱く訴求されており、とてもお茶目である。
この雰囲気は、期待大!
ルー(大柴の)マニア代表として、都内唯一のルーマニア料理店に、いざ!
■ルーマニアのパー子さん
休日13時ごろの訪問だったが、先客は2組。
中年の外国人カップル1組と、若い外国人男性と日本人女性のカップル1組だった。
外国人の3名は、ルーマニアの方なのかもしれない。
ルーマニア人と思われるきれいな女性店員さんが、私を満面の笑みで出迎えてくれた。
案内された席に座り、店内をぐるりと眺める。
木の温かみを感じる店内は、写真や民芸品のようなものが複数飾られていた。
大使館の方々も利用されているとのことなので、こういう、「ザ・ルーマニア」という演出は重要なのだろう。
※ドラキュラさんの家の出窓ってこんな感じなのかな、と思わせる一角
さあ、何を食べよう。
というか、何があるんだろうかルーマニア。
ルーマニアの近隣国であるブルガリアの料理の食べ放題ランチは以前楽しんだが、やっぱり、似ているんだろうか。
それとも、てんで異なるのか。
※ブルガリア料理食べ放題ランチが楽しめる、京橋「SOFIA」についてはこちらを
何を食べよう・・・と考えているときほど楽しい時間は、ない。
ソワソワ、ワクワクする私に、店員さんがメニューをスッと差し出してくれた。
さあ、どんなローカル料理が待っているんだろうか。
「・・・!」
ラミネート加工されたA4サイズのメニューを一瞥するや、息を飲んだ。
たった1種類の、3000円もするランチコースしか書かれていないのだ。
※なんと5000円が3000円に!こりゃお得!・・・なのか?
慌ててウラ面も見た。そっちは白紙だった。
もう一度オモテ面を見る。
やっぱりコースしか書いていない。
「あの・・・ランチは、他には・・・」
不意打ちで3000円の昼ごはんを受け入れられるほど、リッチな暮らしはしていない。
それに、事前情報では1500円くらいのセットがあるとのことだったのだ。
そっちのメニュー、出し忘れているんじゃないだろうか。
「こちらのコースのみ、デス!」
きれいな女性店員さんは、にっこりと満面の笑みで、その上最後にウフッ、とかわいらしい笑い声まで添えて、こちらにとっては切ない回答を返してくれたのだった。
しかし、どうも腑に落ちない。
ええい、聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥だ!
思い切って、低額メニューの有無について確かめることに。
「1500円くらいのメニュー、ありませんでしたっけ・・・?」
「増税で、いまはこのコースだけなんデス」
ウフッ、と笑う彼女は何も悪くない。
恨むべきは増税!憎き増税!こんなところに影響してるぞ増税!
1500円では採算が合わないのか・・・。
彼女のまぶしい笑顔を前に、「そうですか、3000円ですか、なら帰ります」とは切り出しにくい。
どうしよう。
「・・・じゃ、そのコースで・・・」
スペシャルに予算オーバーだが、ここは致し方あるまい。
社会勉強代、ルーマニア旅行代と思って気持ちよくリッチランチをいただこうじゃないか。
それに、本来5000円のところ、な、な、なんと!3000円!である。
とんでもない量の料理が出てきたら、それはそれで結果オーライだ。
メインディッシュは魚か肉から選ぶのだが、この日は同行して下さった方がいたので、両方をオーダーした。
「ありがとうございます。ドリンクは何回でもお代わりできマス!」
ウフッ、と彼女はドリンク飲み放題である旨を強調し、厨房へと姿を消した。
それにしても、彼女のにっこり、ゆったりした口調とシメの「ウフッ」のインパクトたるや、すごい。
文章だけでは表現しきれない、フレンドリーな温度と湿度。
なんだか心惹かれてしまう強烈な引力。
話すテンポも声も違えど、そのパワーは、さながら林家パー子さんのようである。
そういえば彼女、赤いエプロン、赤い腕時計、赤いアクセサリーを身に着けていた。
あれはルーマニアン・パー子・スタイルなのだろうか・・・。
そんなことを思いながら、イチオシされた飲み放題(といってもアルコールはなし)スペースに向かったのだった。
■3000円ランチ 全体像
ドリンクコーナーに用意されていたのは、ホットコーヒーとソフトドリンク4種類。
ソフトドリンクは、アイスコーヒー、ジャスミンティー、フルーツジュース2種だ。
ジュースはいずれも大変濃厚でおいしかった。
●オードブル
注文からほどなくして、サラダとテリーヌが盛られた大皿が登場。
※これで1人分。盛り付け方もユニーク
店員さんは相変わらずのパー子さんっぷりで、ひとつひとつを解説してくれた。
サラダの隣にあるペーストは、白い方がイクラ、黒い方がナスだという。
真っ白なのにイクラ味とはどういうことだ。
疑いながら、白いペーストをペロリ。
「イクラだ!」
ルーマニアでは、魚卵のペーストというのはメジャーな料理なのだそうだ。
あの独特な匂いが口の中で広がり、イクラ好きとしてはたまらない。
これは、フルーツジュースじゃダメだ。ワインをオーダーしたくなる。
その隣にあるテリーヌは、濃い色のほうがポーク、薄い色のほうは海老。
いちばん右は、マヨネーズがたっぷり乗ったポテトサラダだ。
イクラには驚かされたが、他のペーストやテリーヌは、馴染みのある食べやすい味だった。
モチモチ感がたまらない「ルーマニア風のパン」なるものも提供され、これにペーストをつけていただくとまた、美味!
ただ、メインディッシュの魚と肉には、パンになすりつけるに最適なソースがかかっているものと思われるため、「with パン」で楽しみすぎないよう留意したいところだ。
●スープ
続いては、ルーマニアでポピュラーだというスープ「チョルバ」。
ここでは「チョルバ」としか紹介されなかったが、具に合わせて「鶏肉のチョルバ」とか「牛肉のチョルバ」という呼び方をするらしい。
大きな鶏肉が入ったチョルバは、チキンブイヨンの優しい味だった。
あっさりしていて、ヘルシーな印象だ。
鶏肉もよく煮込まれていてやわらかく、それでいてジューシー。
ここにもパンを浸して食べたいけれど、ガマン。
メインディッシュの到着を待とうじゃないか。
●メインディッシュ(肉)
ルーマニアは農畜産業が盛ん。
お肉の方のメインディッシュを通じて、前述の女性店員さんにそんな話を聞くことができた。
代表料理の「トキトゥラ」は、いろいろな肉をトマトソースで煮込んだ、シチューのような料理。
「ルーマニア」で振る舞っていただいたトキトゥラには豚肉、鶏肉、もしかしたら牛肉も入っていたかもしれない。
これまた、日本の家庭にも出てきそうな、食べやすくおいしい料理だった。
添えられている丸い物は、一見マッシュポテトのようだが、実はとうもろこし。
生産量が非常に多いとのことで、とうもろこしを粉状にし、小麦粉などと一緒に混ぜて団子状にしたものが、この「マーマリガ」という食べ物なのだそうだ。
「ルーマニアでは、これがごはんなんデス!」
ウフッ、という相変わらずの微笑みとともに、店員さんは、ルーマニア人にとっての「マーマリガ」とは、日本人にとっての白米のようなものなのだと教えてくれた。
味はないが、ほんのりとした穀物の甘みを感じる。
モチモチした食感もちょうどよく、これは確かに、あらゆるおかずとの相性が良さそうだ。
トマトソース味のトキトゥラとの相性も、もちろん抜群!
●メインディッシュ(魚)
肉料理のほうは郷土料理感が出ていたものの、こちらはシンプルな白身魚のグリル。
ホワイトソースは濃すぎずおいしく、温存していたパンも大活躍。
魚は皮もパリッと焼けていたので、骨以外はすべて、余すことなくいただくことができた。
しかしあとで調べてみれば、肉料理がメジャーな分、魚料理は高級品扱いなのだとか。
確かに、トキトゥラに比べるとボリュームが少なかったかも?
いや、でもここは日本。
魚だけが高いというわけではないし、うーん。
そんな疑問も残るので、「ルーマニア料理に浸りたい!」という方は、魚ではなく肉をメインディッシュに選ぶことをおすすめしたい。
ちなみに、このタイミングでパンを食べきってしまったのだが、お代わりなどの提案はなかった。
要望したら出してくれるかもしれないが、別料金の可能性もある。
●デザート
あっという間にデザートタイム。
お店の手作りバニラアイスが振る舞われた。
アイスの上に生クリームとベリーのようなものが乗っている。
実は、他のテーブルではデザートプレートのようなものがチラと見えたのだ。
少なくとも、このアイスクリームの器ではないものが提供されていた。
そのため、デザートは楽しみにしていたのだが・・・アイスかァ・・・。
同郷のよしみみたいなものもあるかもしれないし、あらかじめ別のコースを予約していたのかもしれない。
隣の芝は青く見えるけれど、目の前のアイス、ひとまずいただこう。
少し溶けた絶妙なやわらかさのアイスクリーム。
ホイップクリームがなくてもおいしい。
最初から最後まで、日本人に馴染む味の料理ばかりだった。
日本仕様の味付けにしてくれている、と考えることもできるが、周囲のお客さんはやはりルーマニアの方のようだったので、本場の味を再現しているはずだ。
店頭写真を見る限りでは、シェフも、現地の方だったし。
ルーマニア、遠い国なれども、その土地に住む人たちの味覚はジャパニーズと近いのか。
民族もまったく異なるのに、不思議なものだ。おもしろい。
■ごちそうさまでした
以上で、大奮発ランチタイムは終了してしまった。
これが5000円というのは、ちょっと高い気も。
同行して下さったのは女性だったが、パンを残していたので、女性には十分な量。
ただ、男性には明らかに物足りないと思われる。
パンがとてもおいしいので、お代わりを求めることを勧めたい。
未練がましく述べておくと、ランチがコース一択というのはどこか寂しい。
異国料理店を訪れるときの楽しみといえば、メニューを眺めて、へえ、こんな料理があるんだ、などと思いながら、注文するものを悩むことだと思うのだ。
そうした楽しみ方を求めるのであれば、夜の訪問のほうがよいだろう。
しかし、パー子さん、などと呼んでしまったが、女性店員さんのおもてなしぶりは必見。
笑顔も、若干カタコトの喋り方もチャーミングで、ついつい惹きこまれてしまう。
ルーマニア大使館も御用達だというこのお店、きっと彼女の魅力も大きく影響しているものと思われる。
そんな彼女、最後にチラシを持ってきてくれた。
「ルーマニアでは、オペラが有名デス。夜、オペラのライブをやる日もありますから、またぜひ来てくだサイ!」
チャージは無料らしい。
チラシの片隅には「このチラシを持参すると、ランチ1500円」という旨が記載されており、本来の値段である5000円はどこに行ったんだとツッコミを入れたくなるも、1500円で今日のランチコースがいただけるのであれば、お得の極み。
こちらのお店を真に楽しめるのは2度目以降、ということだろうか。
店員さんは店の外まで見送ってくださり、姿が見えなくなるまで手を振ってくれた。
そうか、私はルーマニアに旅行に来ていたのか・・・そんな気分になるひと時だった。
ルー(大柴の)マニア、ルーマニアを堪能。
再訪した暁には、玄関の「父の日フェア」が継続されているかどうかを確かめようと思う。
※お店情報はこちら