汚れてもいい適当なパーカー(多分高校生か大学生のときから使っているユニクロのやつ…)を羽織って、近所の喫茶店へ。
カウンター席に座りパソコンでSNSなどをいじって過ごしていたら、隣の席のお姉さんがアイスカフェオレをガシャーンと。テーブル上で倒れただけなのでグラスは割れておらず、パソコンも奇跡的に無事。されど我が身はヒンヤリ、コーヒーまみれ……。
お姉さんは慌てた様子で「すみません!大丈夫ですか?ホントすみません」を繰り返しながらタオルを貸してくれ、昼の超繁忙時間帯に店員さんが床を拭き拭き。
本当に幸いながら、被害にあったのは年季もののユニクロパーカーと、見事なまでにカフェオレ色のズボン(これも5年以上履いてるな…)のみ。もし昨年買ったばかりのライトグレーのウールのコートを着ていたらと思うと身震いする。
というわけで、私が着ているのは見るからに「汚れていい服」。「本当にすみません」と言う彼女にかけられる言葉といえば「どうかお気になさらず」の一択だった。洗っても落ちなきゃ、捨てよう。
実は私、コーヒーをかぶるのは人生2度目。1度目は新品の暗いグレーのワンピースを着ていたときだった。座って作業をしているところに、上空から肩にびしゃりと……。あれはショックだった、ショックだったけれど、着ているのはいかんせん「暗いグレー」の服なのだ。それなりによく見ないと、コーヒーのシミはわかりにくい(でもこういうのって、自分はとても気になったりするのですよね)。この状態で「ではクリーニング代を」なんて言えるだろうか?
……私は言えなかった。
クリーニング代の請求はまっとうなことだと思う。その行為に非はないと思う。でも私は、見ず知らずの人に「なにさ全然汚れたかどうかわからないのに、ちゃっかりクリーニング代せしめちゃってサ」と思われることの方を恐れてしまった(その後、酸素系ハイターの頼もしさを知ることとなる)。
本当はケチンボなのに、見栄っ張りだから「ケチな奴」と思われることを恥じたのだ。「風刺画に描かれた成金」のようになりたい。夜に落し物かなんかをした女性に向かって、成金のオッサンがお札に火をつけながら「ほうら明るくなったろう」と言っているあの絵。あのオッサンくらいの気持ちの余裕を持って生きていきたい。「憧れの人は?」と尋ねられたら「成金のオッサン」と答えたい。
なんだかんだと書いたけれど、こうして悩めるのは相手が人間だからこそ。相手がカラスでダメージがウンコってこともあるんだもの。カラス相手じゃクリーニング代もへったくれもない……って、つまり悩む余地なく諦められるカラス相手の方が、精神衛生上はまだマシなのかもしれないぞ……ウーン(ウンコの話題になったので)。