訪れる機会が少ないせいもあり、”新宿で飲む”というと少し身構えてしまう。指定された会場が東口だと、わずかに震える。しかも住所が雑居ビルの6階あたりで、某グルメ情報サイトに記載された店舗情報がやたらきらびやかで、個室をウリにしていたら、もう、心のザワザワが身の回りに文字となって飛び散る事態。
いいお店がたくさんあるのは承知しているのだけど、日ごろ開拓できていないものだから新宿への偏見がなかなか拭えない。反省すべき点である。
通い慣れていない新宿の地には「ここなら間違いない」という絶対の信頼が寄せられる、顔が見えるお店に出会えずにいたのだ。
新宿西口、常円寺のお墓の目の前にある「ふるさと」さん。目の前という言葉がこれほどぴったりなこともあるまい、というくらいに墓・目前である。
店名のとおり、心安らげる安住の地だった。ついに新宿で見つけた、我がふるさと!新大陸をコロンブスの気持ち、いまなら少しわかる。
何がいいって、まずはお店の目の前にある”ノボリ”ですよ。
シンス捜索隊・みうらじゅん隊長に知らせたくなるほどに立派な「SINCE1999」。フォントも楕円っぷりも、かなりいい。隊長は「シンスを語るなら20年くらいの歴史があるといい」といったことをおっしゃっていたが、18年の歴史、シンスな油が乗っていると言ってよいのではないだろうか。
※参考:安住紳一郎とみうらじゅん 2017年Since(シンス)調査を語る
最初の1杯はホッピーセット(500円)で。白で、とお願いしたら、ママさん(隣の常連さんたちが”ママ”と呼んでいた)が「赤もあるよ!」と教えてくれたので赤にした。初めてです、と伝えると「なんかね、飲みやすいらしいのよ」と。
調べてみれば、正しい商品名は「55ホッピー」。
麦芽使用率100%・海洋深層水を一部使用、醸造時間も通常の倍をかけてじっくり丁寧に熟成。
※参考:ホッピービバレッジ株式会社
熟成=飲みやすさ なのかしら。ほかのお店では「プレミアムホッピー」などと称しているケースもあり、通常のホッピーセットより50~100円くらい高いのが普通。この赤ホッピーも、500円ではなかったのかも…今度確認しておかないと。
ふるさと感たっぷりのお通し。
川エビ(550円)。塩気がちょうどよくておいしい。
「ホッピー、どうだった?飲みやすいでしょ?」と言いながら、ママさんが持ってきてくれた。
鮭オムレツ(550円)。
ママさんはもう1回「ホッピー、飲みやすいでしょ?」と話しかけてくれた。川エビの段階で既にママさんのファンになっていたが、ますます好きになってしまう。
全然関係ないけれど、甘いものを食べたときに「甘すぎなくておいしいのよ」と言いがちなマダムを思い出した。彼らに割と甘めのゴディバのチョコレートなどを与えても「甘すぎない」という評価を下すことがあるので過信してはならない。
でも、ママさんのことは信じる。確かに赤ホッピー、マイルドだった(気がする)。
ちなみにオムレツは他に明太子、しらす、納豆がある。その上、だし巻き卵もある。卵パラダイスだ。ふるさとさんでの「卵無双」がちょっとした夢になった。
海鮮納豆(650円)はマスターが薦めてくれた。まぐろ、いか、たこ、たくあんと納豆を混ぜていただく贅沢納豆だ。たくあんというのがいい。
でもいちばん忘れられないのは、メニュー上でも派手に「おすすめ」表記されていたポテトサラダ(小・400円)である。従来のホクホク型ポテサラとは一線も二線も画す、ねっとりとした食感にびっくりする。水分の多い新じゃがいものような食感なのだ。
食後の口直しに、と薦められたキウイのシャーベットもお願いしてみた。価格失念。爽やかな見た目ながら、アルコール度は7%。
残念ながらこの日はスケジュールの都合もあってここで終了になってしまったのだが、ほかにもまだまだ、いただいてみたいものがたくさん。お刺身がどんな感じなのか見てみたかったし、レバーの竜田揚げとか、スペアリブとか、食べてみたかったな。〆の炭水化物もいろいろあって、焼きそばはオイスターソース味だと書かれていた。
いや、なによりママさんのチャーミングさがすごい。初対面でも気持ち良くフレンドリー。マスターの温和な雰囲気も素敵だった。
コスパ最高!みたいなボリューム満点メニューや、名物と言えるようなパンチ力のあるメニューは見当たらない。お店が凝ってるとか、すんごい歴史があるとかでもない。SINCE1999。それでも行きたくなってしまう、いや、”だからこそ”行きたくなるお店なのだ。ふるさとには、いつもと変わらぬ風景があってほしい。
いずれもしっかりとおいしくて、ママさんたちのお人柄に癒されるからだろう。まさにふるさと。まさか新宿の地で見つけられるとは。
次回こそはいろいろ食べるぞ。
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