交際相手もいない1人寂しいアラサー独女は、何かにつけて虚無感を覚える機会が多いのではなかろうか。
少なくとも私はそうである。
仕事がうまくいかなかった、どうも体調が優れない、楽しいことがない・・・そんな風に心が満たされないとき、その穴を埋めてくれるのはいつだって「食」である。
食べれば口の中は幸せだし、もれなく胃が膨れる。
食べものたちはただ黙って、私に尽くしてくれるし裏切らない。
困るのは太ること。それに尽きる。
したがって、「大いに食べる」という行為は、カロリー消費チャンスの多い日中が望ましい。
しかし、上述した「うんざり気分」というのは多くの場合夜に訪れるものである。
■OBAMAと同時に憂鬱が来た
先週は米国大統領が来た。
次郎さんの寿司を大勢で食べる写真を見て、要人は気の毒だと感じた。
人生で一番うまかったと言っていたそうだが、あんな雰囲気でうまいまずいがわかるものか。
ひとりでゆっくり食べたいだろうに、実に大変な仕事である。
不思議なことに、彼が来日するとともに、アメリカのおしゃれな風が吹いたせいなのか、私は仕事がうまくいかなくなった。
日が沈むにつれ、自分の非力さや効率の悪さを憂う日々が続く。
夕方になるとムシャクシャして、いっぱい食べて全部忘れたくなるのだ。
太ってもいいや、という想いで食べ放題に行くことも検討するのだが、夜の時間帯に食べ放題を実施している店はあまり多くない。
ディナーメニューの残り物その他を一掃しつつ、お客様にサーブする手間をなくしたのが、ランチタイムの食べ放題なのだと思われる。
それに、「太ってもいいや」と覚悟しつつも、心のどこかでは遅い時間の食べ放題に怯えている自分がいる。
安く、たくさん食べられて、それでいて食べる量をある程度のレベルでセーブしたい。
ついでに言うと、日中に読み切れなかった本を読みたい。
その上、今日はパソコン作業もしたい。
ムシャクシャ気分を抱えたまま夜の街を歩き、考えを巡らせた。
■夜に、安く満腹になり居心地よく仕事もできる店はどこだ
【候補1】前から行きたかったスープカレー屋さん
結構な量が出てくるようだし、比較的リーズナブルだった。
しかし店が小さいので長居は難しそうだ。却下。
【候補2】愛用しているモツ焼き屋
ものすごく安くておいしい居酒屋があるのだ。
しかも火曜日はゆで卵をタダでくれる。
今日は火曜日じゃないか・・・久々に行ってみようか、と思った。
タモリさんは飲み屋で本を読むなんて信じられないという旨をおっしゃっていたが、家が嫌いで人と会話することが得意でないとなると、居酒屋×読書の相性の良さといったらないのだ。
タモリさんに嫌われたくないが、きっと会えることはないので我が道をゆこう。
しかし待て、今日はどうしてもノートパソコンを開きたい。タブレットどころではなく、ノートパソコンで作業がしたい。
となると、さすがにそれは店に失礼だ。
カウンターでノートパソコンなんて開いてみろ、周りの客の酒をまずくしてしまうに違いない。無粋の極み。
残念だが今日は却下だ。
ゆで卵はセブンイレブンで買って食べればよい。
【候補3】家
狭い我が家は嫌いだが、野菜を大量に買い込んで、嫌というほど食べるのはアリかもしれない。
たくさん食べても、野菜なら身体にかかる負担も少ないだろう。
ノートパソコンだろうがなんだろうが、自由であるのも利点である。
だが却下だ。今日はだめ。
実は数日前にも「ああ、とにかくいっぱい食べたい!」という日があり、その日は家での食べ放題を実施したのである。
野菜を中心にたくさん、本当にたくさん買ったのだが、恐ろしいことにすべて食べきり、それでは欲が収まらず、食べる予定のなかったストックおやつにも手を染めてしまい、大変後悔したのである。
そのうえ、あまりにも野菜を食べすぎたのか、胸やけに苦しんだ。
(思い返せば新タマネギの食べ過ぎである)
あの胸やけの気持ち悪さ、そして後悔するときの嫌な気持ち。
今、ただでさえウンザリした気分でいるのに、そんなものを追加で塗りこまれたらもう眠れやしない。
【候補4】マクドナルド
・・・即却下。
脳裏をMの字がかすめただけ。
私がM属性だという神からの突然のお知らせだったのかもしれない。
だとすれば今は黙ってろと言いたい。
神様、そんな暇があるなら、いい食べ物屋を紹介してください。
【候補5】サイゼリヤ
神は私を裏切らなかった。
マクドナルドの赤と黄色を追いかけるようにして、緑色のあの看板が脳内に訪れたのだ。
それだ、それだよ!今日はサイゼリヤだよ!
私の生活圏内に増えてきたサイゼリヤ。
大概のものはおいしいと思える幸せな口を持っているので、日ごろから愛用している。
200~300円程度のミニおかずが複数種あるのがよいし、ドリンクバーもある。激安ワインもある。あと、「プチフォッカ」は大好物である。
私の生活圏内にあるファミレスといえば、ほかにはデニーズしかない。
デニーズは本当に心から愛している店だが、安さは備えていないし、ドリンクバーがなくなってしまった。
というわけでサイゼリヤにて憂さ晴らし大食いディナーを開催することに決定したのである。
■サイゼリヤ、いいなあ
20時前にサイゼリヤ着。
平日の夜、空いているだろうと思いきや、ファミリーから大学生集団からサラリーマンのおっさんから、ありとあらゆる人で店内はそれなりに混んでいた。
駅前の店舗だからだろうか。
とはいえ待ち時間なく禁煙席に通してもらうことができ、ひとまず安心である。
さあ、食うぞ!
手渡されたメニューは、私が知っているものから新しくなっていた。
日ごろ頻繁に来ている気がしていたが、ある程度の時間が経ってしまっていたらしい。
新しいメニューには、開いた瞬間からときめかされた。
サラダがお手頃。
ファミレススープといえば家で飲めそうなコーンスープだけど、ミネストローネがあるなんて。
さらにめくった、次のページの罪深さといったらない。
どれも食べたいじゃないか!
100円ワインは飲まないわけにいかない。
そして特にこの「辛味チキン」なるメニュー、初顔合わせである。
形は手羽先っぽいが、5つも盛られている。
それでいて300円?250キロカロリー?
事実だろうか、こんな幸せなメニューがあっていいのだろうか。
ええい、注文だ。
私が日ごろ愛用しているのはこのラインであるので、この日も注文。
とりわけホウレンソウが好きだ。
「どうせしなびたホウレンソウが出てくるのでしょ」とお思いであれば考えを改めていただきたい。
意外にもちゃんと、ベーコンも入っているホウレンソウ炒めが出てくるのである。
安価な割に食べごたえがあり、訪問すると必ず食べている気がする。
ページをめくり、ハンバーグ類にも目がくらんだが・・・
今日の布陣
・白ワイン(グラス)
・小エビのサラダ
・ミネストローネ
・ホウレンソウ炒め
・辛味チキン
上記に加え、ドリンクバーということで決定。
食べ足りなければ追加注文すればいい。なにしろ安い。
■ムシャクシャ一掃!豪華食卓
グラスワイン
↓
サラダ&ミネストローネ
↓
ホウレンソウ
↓
(結構待って)辛味チキン
という順番でやってきた。
ご覧あれ、この豪華な食卓を。
ご覧あれ、このリーズナブルさを。
これだけで目も財布も大満足、ストレスの3割は解消された。
無心になって食べたが、サラダはサウザンアイランド風ドレッシングがふんだんにかかっているので、カロリーオフを求めるなら「ドレッシング不要」と告げたほうがよいだろう。
そのうえで、タバスコか塩あたりをもらって食べるのはどうだろうか。
次回はそうしてみようと思う。
ミネストローネは割とショボイ。
量も少なめだが、意外にも240キロカロリーとエネルギッシュな一品である。
油分が多いのだろうか。
現在愛用中のおからパウダーを混ぜて食べたらとてもおいしかったので、よしとする。
リピ(ート)はナシかな。(●cosmeの真似)
そして、満を持しての辛味チキン。
(三角食べは苦手で、一品ずつ討伐するスタイルで食します)
本当にこの写真のとおりのチキンが出てきた。
なかなかのサイズであり、改めて300円であることと、疑わしくも250キロカロリーであることに感謝の念を隠せない。
なぜ「辛味」と名乗っているのか、名付け親に問いただしたいほどに辛くないが、これなら確かにメニューの記載通り、お子さんが食べても問題なしだ。
油たっぷり、ぷりぷりでおいしい。
パソコン作業も行いたいため、紙ナフキンで骨の部分を持ちながらムシャムシャといただいた。
手羽先はきちんと骨の関節の部分をくるっとひねってバラバラにして、軟骨の部分までおいしくいただくのが正しい。
手羽先を貪り食う私に、百年の恋も一時に冷めると言ってくる殿方がいるのなら、「百年も生きてないくせに」と反抗期ワードで言い返すまでだ。
そんな男お断りだ!
その前に男から求められていないことを忘れていた!
どうでもいい!
あと、隣の席の男子大学生、こっちチラチラ見んな!
■ストレス解消、ごちそうさん。カフェラテを頂戴
ああ、もう、大満足。
本音を言えばもっともっと食べられるし、食べたいけれど、ファミレスのいいところはカロリー表記されているところにあるのかもしれない。
いくら安いと言えども、追加の出費がかさむ点もこの際利点と考えよう。
食べたもののカロリーが、なんとなく脳内でカシャンカシャンと計算され、自制することができた。
食後、せめてデザート代わりにとドリンクバーでカフェラテを飲むことにした。
牛乳は意外とカロリーが侮れないので、基本的にはブラックコーヒーしか飲まないようにしている。
(お腹がいっぱいにならないのにカロリーを摂取させられるのは嫌だ)
サイゼリヤのドリンクバーでカフェラテを飲むとき、私は大抵「牛乳切れ」に遭遇する。
今日もかな、と思ってボタンを押す。
威勢よくシュワーと音がするのだが、温めて泡立てて出すはずの牛乳がなければ、ただのスチーム、すなわち湯気にすぎない。
スモークのなかから現れる美川憲一の如く、スチームの湯気のなかから現れたのは黒いコーヒーだった。
カフェラテボタンを押したはずなのに・・・やっぱり牛乳切れ。
昔はこういうときにだまって我慢していたのだが、もう歳も歳なもので、バイトの兄ちゃんを捕まえて、牛乳切れてんだけど、とクレーム・・・
が言えないのだ。言えない。
同い年以下の人たちを畏怖する性格がたたり、慇懃無礼アタックである。
「あのう、お忙しいときに大変恐縮なんですが、コーヒーマシンのミルクがですね、切れていてですね、お手すきのときでいいんで、足してもらえるとうれしいなあなんて」
兄ちゃんはハイと一言残して、のちに牛乳を足してくれた。
私が「お手すきのとき」などと言ってしまったことを真に受けてか、すぐには足してくれなかったのでちょっと寂しかった。
それでも、牛乳たっぷりのカフェラテはおいしかった。
それにしても1200円でたくさん食べられてお酒も飲めて席でパソコン開いても文句を言われないなんて、私は天国にいたんじゃなかろうか。
困ったときはまた来よう。チキン食べよう。
■またしても
サイゼリヤに行った翌日、気分よく出社したのに、また仕事がうまくいかなかった。
どれだけ無能なのだろうか。消えたい。
最近できたばかりのガストを訪れることにした。
あまり行ったことがないのでメニューのイメージも乏しいが、安さはサイゼリヤクラスと思われる。
■ほぼ、初ガスト
前日のサイゼリヤと同じく20時前にガスト着。
できたばかりだからだろうか、店は混んでいて、名前を書いて順番を待たねばならなかった。
源氏名を書いてしばし待つ。
メニューが置かれていたので、この待ち時間を使って悩むことにした。
メニューを開く。めくる。閉じる。
・・・サイゼリヤで感じた、あのときめきが無い。
もう一度開く。めくる。閉じる。
あの「辛味チキン」に匹敵するものを求めていたが、競合はこのあたりか。
価格帯は300円で同じだが、肉がたった4つ。なのに355キロカロリー。
(辛味チキンは5つで250キロカロリー表記)
カロリー表記は信じ込むのも問題なのでさておき、写真からして肉が小さそうだ。全くそそられない。
そしてサイドメニューの少なさ。
基本的には主食系メインのメニュー構成であり、おかずを食べにくる店ではないようだ。
サイゼリヤ名物・100円ワインに匹敵するものもなく、全体的に、サイゼリヤよりやや高いのが気になる。
入らなければよかったかなあと後悔するなかで源氏名が呼ばれ、席に案内された。
水とお手拭はドリンクバーコーナーにあるので自ら取りに行くように、という旨がアナウンスされた。
丁寧なのだが、このように、問答無用で聞かされるマニュアル台詞が多い店は大嫌いだ。
Tポイントカードを出す出さないは個人の自由であるし(ファミマやドトール)、本を売りたくなるタイミングなどそうそうあるものではない(ブックオフ)。
この際言わせてもらえば、ブックオフのマニュアル台詞は去り際にダラダラと「お売りいただける本があったら云々」と言われるので、それ最後まで聞かなきゃだめ?という気分になる。
途中で立ち去ればいいのだが、なんだかそれはそれで嫌な気持ちになるので、とにかく本当にどうにかしてください、ブックオフさん!
苛立ちながら隣の席を見やれば、社会人カップルがディナーを楽しんでおり、男子が女子の頭を撫でているのであった。
ハンバーグかナデナデかどっちかにしなさい。
嫌な気分になってメニューを開くと、順番待ちスペースには置かれていなかった、夜間限定メニューのシートが挟まれていた。
100円ワインもあるし、梅酒も100円だそうだ。
そして最もうれしいのは、サカナ群。
ホッケがあったらそれだけで幸せだ。
ああ、よかった。心が浄化されていく。
今なら思える、器の小さい人間で申し訳なかった、と。
■本日の布陣
・白ワイン(グラス)
・ホウレンソウ炒め
・ほっけの塩焼き
・ドリンクバー
に決定。
スープもほしかったのだが、コーンスープしかないのでやめた。
粉末コーンスープが大好きな身としては、200円も払って飲む気になれない。
しかし、さすがに上記メニューだけではおなかが膨れない。
そこでドリンクバーが大活躍である。
品ぞろえがサイゼリヤの比ではないのだ。
■ドリンクバー事件簿
まずは空腹を紛らすため、「バニララテ」なる甘い飲み物を選択。
そこにおからパウダーを入れて食べた。
おいしすぎたが、デザートとして最後に食べればよかったと後悔。
ドリンクバー2巡目。
ゼロカロリーコーラがあるのは嬉しい。
炭酸でおなかいっぱい感を醸成するべく注ごうとしたのだが、あろうことかコーラの原液が切れていた。
カフェラテの牛乳切れといい、どうしてこう、間が悪いのだろう。
せかせかとテンパりながら動く店員のお姉さんを捕まえる。
「あのう、お手すきのときで結構ですので、ゼロカロリーコーラの原液がなくなっていたんで、補充をお願いできると・・・」
透明なグラスに入った、やや濁った水。
コーラの原液がほんの少し入ったためである。
そのグラスを突きつけながら彼女に告げると、それはすみません!と丁重に謝られた。
サイゼリヤでカフェラテの牛乳切れを指摘したときとはだいぶ違う。
ホスピタリティを感じる。
一度席に戻ると、すぐに白ワインとホウレンソウがやって来た。
ホッケもそろってから記念撮影をしようと思ったのだが、なかなかやって来ない。
間をつなぐために、ゼロカロリーコーラを求めてドリンクバーを訪れるも、相変わらずの原液切れ。
さっきの謝罪はなんだったんだよ。
偏見に満ち溢れていることは先に謝るが、男女の差を見せつけられた気がした。
カフェラテのミルク切れを指摘すると、「ハイ」としか言わなかったものの、それなりにすぐ対応してくれたサイゼリヤ男子。
コーラ原液切れを指摘すると、「申し訳ありません」としっかり謝ってくれたが、放ったらかしのままのガスト女子。
店の繁忙状況やその人個人の性格にもよるので、「男ってこうだから」「女ってこうだから」という想いに至ってはならないのだが、ついつい。
■飲食業って色々難しいんだな・・・
コーラをあきらめて席に戻ると、待望のホッケが登場。
写真だと伝わりにくいが、このホッケには愕然とした。
こんなに小さいホッケを見つけてくるのは難しいんじゃないかと思うほど小さく、表面がカピカピになっている。乾燥している。
焼いたのだから当たり前、というご意見もあろうが、乾燥しすぎていて骨が身から剥がせないほどだったのだ。
400円という価格は確かに安いが、安ければいいというものでもない。
そんなに乾いているなら骨ごと食ってやる、とガブリとかみついたが、なんだかカスカスの食感。
身がすごく痩せているのか、歯ごたえというか、弾力がないのだ。
全ての雑念を振り払い、ただ、ただ、無我夢中で食べた。
食べるという行為に集中した。
味云々は考えないことにした。
ホウレンソウはおいしかった。
完食し、パソコン作業に入ることに。
もうコーラにがっかりしたくないので、コーヒーを飲む。
バニララテはおいしかったが、当分ガストはいいや。
再訪はないです。(食べ○グの真似)
※でも、たった1000円でお酒が楽しめたんだよな・・・とも思う