言いたいことやまやまです

仕事をやめ、誇りを持って主婦として生きることにした1985年生まれ。金儲け臭ゼロのブログで生きざまを書き綴っています。お金はいつでもほしい。

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食堂内で食レポ自撮り動画を撮る彼を私は笑えない

浅草で新年会をした。在住歴1年強の私が思い描く「下町の新年会ってこんなかな」のイメージに沿って、明るい時間から、食堂で瓶ビールを飲む。

浅草界隈には「食堂」がちらほら。(私が行くところは)ちゃんと、朝でもビールと清酒がある。逆に言うと、酒はそのくらいしかない。クラフトビールの豊富なバリエーションや日本酒のコダワリなどで悩まずに済むから好きだ。潔い。

分厚いガラスの小さいグラスでいただく、昼の黄金炭酸のうまさといったらない。どうか、手酌で。

この食堂のフライが好きで、この日はアジフライを頼んだ。いつもなら唐揚げとキスフライとコロッケが盛られているミックスフライにするのだけど、複数名での訪問だったので、いつも食べていないものにした。お店の方は問答無用で定食にしたりなんかしない。酒を飲む我々にはきちんと「単品」つまりおかずのみを届けてくれる。こういうところがすてきだ。

揚げ物になにかと、レモンだけではなくオレンジが添えられているのが不思議だ。がぶりと食らいつくも、妙なぬるさ。それもまた味と思えば好ましく思えてくる。人付き合いもこういう具合にいかないもんかね。

新年会需要もあってか食堂は混んでいた。しかし回転率はよいようで、つい先ほどまで視界に入っていた客は、気づけばたいてい別の人になっていてびっくりする。はす前のテーブルもそうだった。つい数分前まで老夫婦がかけていた気がするが、いつの間にか若いカップルに変わっている。タイムカプセルに乗ったのか?まさかね。

そしてまた少し目を離しているうちに、その席に動きがあった。

「はいっ、今日は浅草の○○に来ています!」

彼から発された言葉はもちろん、目の前の彼女に向けられたものではない。自前と思しき小さな三脚にカメラを取り付け、それに向かって発声している。お店に許可を取っているのかいないのかは定かではないが、声量が喋り声と同じだったので、賑やかな店内で周りに気づかれている様子はなし。でも、明らかにそこだけが異質な空間になっていた。

いま、私は白状します。彼の撮影風景を目にした瞬間「ユーチューバ―だw」と思った。”w”込みで思った。でもそのあとすぐに、そう思った自分こそがカッコ悪いなとがっかりした。

ふつうの人が「w」の気持ちを抱いたっていい、でも私は「前に出たい」という想いを持っている人間だ。自意識過剰な性格を受け入れて、生きるのが今年の目標。まさにそこに挑んでいるのが彼じゃないか。

本当に楽観的で他人の目なんて一切気にしていない奴だったかもしれないけれど、おそらく、自分が白い目で見られること、まさに「ユーチューバ―w」と思われることなんて百も承知で、覚悟を決めて挑んでいる。偉い、偉いよ。

目立ちたい、前に出たいと言いながら高みの見物を決め込む自分が最悪にダサいのだ。

名物の肉豆腐、実は初めて注文した。いつもミックスフライで満足してしまって、別のメニューに辿りつかないのだ。いただいてみると、お店の名物である理由がよーーーく、わかる。580円とお手頃価格ながら、家で短時間では仕上げられないクッタリねぎに、味が染みに染みた豆腐、ゴロンとデカいお肉、改名したくなるほど茶色くなった白滝。ああ、うまい。今度からは必ず頼もう。

次なる撮影場所に向かうのか、件のカップルは長居することなく去っていった。年の初めにYouTuberな彼に遭遇できたのは、「お前も覚悟決めろよ」という神からの激励の合図だろうか。

……でも、単なるビデオメッセージの撮影だった可能性だって、あるよね。転職も増える季節だし。それはそれでいいか。お互いにいいことがありますように。