大正3年創業の京粕漬の老舗「魚久」。人形町に本店を構える同店は四ツ谷や渋谷にも売店を出しているが、銀座店では、名店の味を気軽にその場で楽しめるイートインスペースが用意されている。
その名を「イートイン あじみせ」というが、平たく言えば「定食屋」であり、コンビニの休憩処とは一線も二線も画すことをお伝えしておきたい。
老舗「魚久」で手軽に贅沢ランチ「イートイン あじみせ」
お店の2階のこじんまりとしたスペースは、平日11時~14時30分の限られた営業時間ということもあってか13時ごろの訪問でも満席。ただ、回転がいいのでベンチで少し待っていればすぐに順番は回ってくる。
なお、単身での訪問を強くおすすめしたい。多くて2名。なお、客席での待ち合わせはNGなので、お連れ様が揃ってからの入店で。あくまでもここは「おいしい粕漬け定食をいただく場所」であり、「くつろぐ空間」ではない……と、私は思う(おもてなししてくださるけれど、長居するのはカッコ悪い気がする)。
座席まわりのスペースはかなり狭いので、順番待ちをする間にあらかじめコート類はレジ前のラックにかけておきたいところ。手荷物も限りなく小さなものに留めておくことをおすすめする。
▲使い捨ておしぼりは「ふかふか」タイプ。リッチな気分に……
メニューはシンプルに下記の通り。
- 銀だら京粕漬定食(税込1,566円)
- さけ京粕漬定食(税込1,188円)
- かれい味噌漬定食(税込972円)
- あじみせ定食(銀だら・さけ・かれい三点盛り・税込1,836円)
ごはんはおかわりすることができる(このすばらしさを後ほどじっくり語ろうではないか)。なおそれぞれの粕漬は単品でお願いすることもでき、飲み物はビールと冷酒が用意されている。
さすが魚久!いちいちおいしい「かれい味噌漬定食」
「ワインは2番目に安いものを頼めば間違いない」なんてアドバイスを授かったこともあるけれど、この日お願いしたのは、いちばんお手頃な「かれい味噌漬定食」。
安いからではない、単純にかれいが食べたかったからだ……!
なにしろ、粕漬は粕漬であってワインではないのでね!
でも、目の前の席のダンディなおじさんがメニューも見ずに「銀だら」と言っていて羨ましかった。
小鉢はハスの梅肉和え。酸味はほぼなく、梅の香りと優しい甘み。
シャキシャキ食感もあいまって、おいしい。
お味噌汁をすすれば、三つ葉がたっぷり。三つ葉ですよ!!!
親子丼でもなんでも、三つ葉がちょいと乗っていると気分が高揚する。
お味噌汁に三つ葉。2品目にして「ああ、もう、今日は満点ランチ……」とうっとりした気持ちになる。
……と、前座が場をあたためたところで、いよいよメインディッシュ。
ばばーん。かれいの味噌漬けの存在感よ。
”お上品な量”ながらも、その照りと焦げに秘められたパワーがすごい。眩しい。
大根おろしだけでも十二分に旨い。
これをごはんに乗せて食べたもの。この写真で白米いける。
かれいの味噌漬、ピンでも撮影してみましたのでとくとご覧あれ。ああ、ごはんが欲しくなる。
キュッと締まった身はほんわりと甘く、口の中で旨みが広がっていく……ごはんもいいけれど、熱燗が欲しくなってきた。そういえばメニューに冷酒があったよな……
今日のところの相棒は白米で我慢。
我慢と言っても、これがまた格別にうまい。
かれいの皮で巻いた白米は、たまらなかったです。
そしてもう1品、注目していただきたいのがこちらの小鉢。
豆を煮たもの、くらいの前印象で、ひとくち。
「どこかで会ったこと、ありますよね」というムードが口のなか全体に広がっていく。
目を閉じれば、霞がかったはるか遠くに人影が……あれは、マスオさん……?
いや、違う、三木のり平だ!正解はごはんですよ!
まさか、海苔の佃煮だったとは。こうやっていただくのは初めてだ。
そしてとんでもなくうまいな……語彙が貧困ですみません。ああ、熱い緑茶が欲しい。
どのくらいおいしかったかって、隣の席にかけたマダム2人組が粕漬以上に「この佃煮おいしいわね」と言っていたくらい。
まあ、ごはんが進むのなんの。
小鉢に残った佃煮がもったいなくて、白米で拭ってきれいに食べたくらいにおいしかった。
みっともないなと、我ながら思う(しかもそれを撮影しているんだよ)。
恐るべきスピードで盆の上の品々がなくなっていく。
ああ、行かないで。楽しい時間はあっという間に過ぎていく……ああ、なんと儚いことか……。
お手軽でも、やっぱり「老舗」!
「イートインあじみせ」という名称から察せるとおり、気取らない雰囲気の店内でお手軽に粕漬定食がいただけるのが魅力なのだが、お客さんの平均年齢は高く、ファッションも落ち着いている。
なんでこんな、大仏が描かれたロンTとカーディガンでやってきてしまったんだろう……と、少々後悔した。
誰も見ているはずがないのだが、思い込みで他人の視線を感じ、自分からネガティブの種を拾いにいくのが自意識過女史なのである。人生楽しそうで羨ましいでしょう。
本当なら撮影可否をご相談して店内の様子なども収められれば良かったのだが、スマホで撮影するというのも、この場においてはとても低俗な行為に感じられ、人の目を盗んで(盗みきれるはずがないのに)無音カメラで手元のお料理だけ撮影した次第。
その割にはよう撮ったな。
早く大人になりたい、と自意識過剰妖怪は思うのであります。
「魚久 銀座店」お店情報
- 店名:魚久 銀座店
- 住所:東京都中央区銀座3-10-15東銀ビル(各線銀座駅が最寄り)
- 営業時間:【1階 粕漬売店】月~土 10:00~19:00 祝日10:00~18:00(日曜祝日定休)【2階 あじみせ(定食ランチ)】 月~金 11:00~14:30(ラストオーダー14:00)
- 電話番号:03-6226-3395(※イートインの席予約は不可)
- 食べログページ:https://tabelog.com/tokyo/A1301/A130101/13005687/
▼お手頃価格で「切り落とし」を手に入れたときの過去記事はこちら
「魚久」の切り落としが700円!京粕漬の老舗の味を気軽に楽しむための秘技