こんばんは、夏の喫茶オンリーの時間です。
浅草・合羽橋で60年超の歴史を持つ老舗喫茶。「魔性の味」を標榜するコーヒーとペリカンのトーストをいただくひとときがたまりません。
夏限定の「カフェ・ソーダー」の販売が始まったと聞き、伺ってきました。
一期一会のカフェ・ソーダー
数年前、マスターが誇らしげに「これはウチでしか飲めないよ!」と勧めてくれたのがきっかけで、いただくようになりました。
おっしゃるとおり、カフェ・ソーダーはカフェ・ソーダーでしかなく、ほかの何かに例えがたい、不思議な味がします。
コーヒーを焦がしながらつくった特製シロップを炭酸で割ったドリンクです。なにも言われなければコーヒーだとわからない人もいらっしゃることでしょう。ほのかに苦く、甘く、香ばしく、強いていうなら黒飴のような味わい。
他のコーヒー店の方に請われてレシピを教えたこともあるそうですが、再現できたためしがないのだとか。
「そりゃそうだよ、ウチだって二度と同じものがつくれないんだから」
レシピといっても、材料の分量は目安でしかないのでしょう。そのときどきの気温、湿度、コーヒー豆の状態等々をかけ合わせ、マスターの味覚とカンを頼りに調整して、やっとその夏に使うシロップができあがるのです。だから毎年、味が違う。
調理工程で「失敗」しないといけない
「今年も大変だったんだよ」
たぶん毎年、カフェ・ソーダーをいただくたびにマスターはこうやって話を切り出しています。
「途中で焦がしちゃって、苦くなっちゃって、そこからの調整が大変だったの」
50年ものの焙煎機でコーヒー豆を炒る。カフェ・ソーダーのシロップは香ばしさが特長だから、かなりしっかりと炒るのだそうです。もうもうと煙が立ち込め、周囲の新しいお店の方が駆け寄ってくるほどだったとか(昔ながらのお店は慣れっこ)。
そうかあ、大変だったんだなあ、と思いながらありがたくカフェ・ソーダーをいただくのですが、昨年も、そのまた前の年も、たしか同じことをおっしゃっていた。
焦がす
↓
苦くなる
↓
調整する
↓
苦みが香ばしさに変化、おいしいシロップに!
焦がすのは失敗ではなく、必要不可欠なプロセスなのです。
失敗しないと完成しない。だから「レシピ通り」ではうまくいきっこない。
しかしおもしろいのが、マスターは「焦がしてしまった」というところでがっかりしてしまうところです。少なくとも「そういうもんだ」とは割り切れていないように見えました。
がっかりして、焦って、一生懸命調整する。もしかしたら、がっかりしないと「必死の」調整にならないから……かもしれません。
いずれにしても、完成したカフェ・ソーダーはまちがいなくおいしい。そんなエピソードを聞くとますますおいしい。
・失敗しないと完成しない
・そういうもんだと割り切れず、必死になる
まるで人生のようではないですか!私もいま、カフェ・ソーダーに匹敵する「商品」を生み出すべく必死の調整中。かなり焦がしてしまったので、やりがいがある……と、前向きに捉えたいものです。