2月中旬に実店舗をオープン予定の、ハードパン専門店 せいわや さんが大好きなのでご紹介します。
せいわやさんを知ったきっかけは、同店のパン職人である静奈さんと友人だったから。
もともとお料理がお好きで上手なことは知っていましたが、まさかプロのパン職人になってしまうとは!
そんな経緯だったので、最初は「食べたい」よりも「応援したい」という気持ちで購入したのです。
ところが看板商品のひとつである「ベーマーバルトブロート」をいただいてびっくり。めちゃくちゃに好みの味、食感、香り!
鏡餅の1段目のような、迫力のある見た目にも圧倒されました。
とはいえハードパンに抵抗感を抱いている人は、それなりにいらっしゃるのではないかと思います。
ライ麦などによる独特の酸っぱい香りと味わい。見た目もゴツゴツ、黒くて、無骨な感じ。
コンビニで売られているサンドイッチでも、胚芽などを混ぜた茶色いパンが使われていると手が伸びない、という方もいらっしゃる気が……(ド昭和世代のわたしの父が、まさにそういう感じ)。
でもせいわやさんのパンは、パンチ力があるけれど、やさしい。
食レポですっかりおなじみの「甘い!」という表現とは、また違うのです。
この「やさしい」をどうしたら表現できるかしら……と思っていたとき、ふと脳裏をよぎったのが、浅草の老舗「パンのペリカン」の話でした。
昭和17年創業の食パン専門店で、開店から74年を機に公開されたドキュメンタリー映画を観たのです。
そこで心打たれたのが、「ごはんのようなパン」を目指しているというお話。
たしか映画公開時は高級食パンが盛り上がっていたような……。
甘くてふわふわな食パンばかりが増えていることに対し、ちょっとした反発心というか、疑念というか、なんだかモヤっとした気持ちを抱いている自分の心があぶりだされた感覚になりました。
高級食パンは「私こそが主役!」という押しが強すぎる!
ウエストランドの漫才でいじってほしいレベルのときもあるくらい(笑)。
それに対してペリカンさんのパンは、ごくふつうなのです。
しっかりと甘みがあってフワフワモチモチな高級食パンと並べると、ともすれば「そっけない」と感じられるほど。
でも、だからこそ、どんなおかずも邪魔しません。
だけど単体で食べてもおいしい。
「甘くてフワフワモチモチ」イコールおいしい、ということではないのだと思い出させてくれます。
これが「ごはんのようなパン」ということか、と腑に落ちました。
……と、余談が長くなってしまいました。
せいわやさんのハードパンにも、この「ごはんのようなパン」に通ずるものを感じた、ということが書きたかったのです。
Instagramでパンの写真、とくにこうしたハードパン、ドイツパンの類のものを探せば、それはそれはおしゃれな食卓がごまんと出てきます。
おしゃれなサンドイッチや、すてきな食器、ワイン。
もちろん、せいわやさんのパンだってそうやっていただいたらおいしいに決まっています。
でもね、現実はそうはいかんのです。
とくに産後の1年間、本当にろくなものを食べられなかったなと思います。
授乳に追われ、落ち着いてきたと思ったら離乳食に追われ。
自分用にパンをトーストするひと手間すら惜しかった。
だからせいわやさんのパンが届くと、台所で一気にスライスして、立ったまま、流しの上で、そのまま食べていました(静奈さん、雑な食べ方してごめんね)。
切りながらひとくち、ラップに包みながらひとくち。
個人的には「りんご現象」と称しているのですが、想定ではたくさんラップにくるんで保存しておくはずが、おいしくて食べまくってしまって、保存できるのは想定の半分くらいという……(りんごも、切りながら食べてそういうことになりません?)。
立ったまま、何もつけずに、トーストもせずに、慌ただしく食べているのに、おいしい。
それでいて、プロテインバーをむさぼり食うときとは明らかに違う「満たされる」心地を抱きました。
実家で、おひつに入れて保存していた冷やごはんを立ち食いしていた記憶がよみがえります。
パンが「映える」ような惣菜と合わせたことも、たぶん、ない気がする。
スパゲティのソース(レトルト)とか、麻婆豆腐とか、名もなき煮物とか、そんなものにディップ。
懐の深いやさしいパンたちは、どんな相手でも受け入れてくれました。
こういう、Instagramにとても載せられないような食べ方をしてもおいしいんです。
慌ただしく食べても、ごはん感覚で家庭料理と食べてもおいしいけれど、シンプルに丁寧に、コーヒーと一緒にゆっくりといただくのも大好き。
最近いただいた、ひまわりの種をたっぷりと纏ったパンにも目を見張ったなあ。
てっきり「周りだけ種いっぱいパターン」かと思いきや、スライスした断面にも種がぎっしり。
私はパンを食べているのか、種を食べているのか?
トーストしたら、口に運ぶ瞬間の香りがもう、食欲を刺激するのなんのって……。
これまでは通販で、パンの名称を見てオーダーさせてもらっていました。
でもお店ができたら、実物を見て、迷って、悩んで、選んで、買える!
本当に楽しみです。ご近所の方がうらやましい。
(2月中旬にオープンするお店の住所は千葉県船橋市高根台6-24-15とのことです)
せいわやさんのスローガンは「大切な人と食べたいものを、食卓へ」。
身体にやさしい材料で、添加物を使わずに丁寧につくられています。
2月に1歳を迎える我が子といっしょに「おいしいね」と言いながら食べられる日も、いまから待ち遠しくてなりません。
せいわやさんの最新情報はInstagramをご確認ください。