こんばんは、気が利かない時間です。
先週、昼に定食屋さんに行ったのですが、「ビジネス街×昼休み×定食屋」という掛け算の意味を無に帰すような、信じがたく「回せない」おばちゃん店員さんがいらっしゃり、いろいろなことを考える時間となりました。
先日もたまたま「あまりにも強引な接客をするおばちゃん店員さんがいる定食屋さん」の話をご紹介させていただきましたが、あちらの方々には得も言われぬパワーをもらったのに対し、今回は「彼女と私、どっちがダメ女か」を考えさせられました。
▼パワフルおばさんはこっちです▼
マルチタスクがこなせない
今回のおばちゃんは、複数のことを同時にこなせないタイプの方でした。それは入店して3分も経てば察することができるくらい、あからさまでした。
できたてのお料理をお客様のところに届けなければならない、のだけど、運ぼうとしたところで「お冷ください」と頼まれてしまうと、そちらを優先してしまう。しかも、頼んだ張本人のもとに注ごうとしていたのに、なぜかその隣のお客さんのお冷が目についてしまって、そちらを先に注ぐ、とまた隣の方が気になってしまって、注ぐ。
できたての料理はどんどん冷めていくのです。
「料理、私が持っていっておきましょうか!?」という言葉が喉元まで出かかりました。なんなら、お冷をお願いしようとするお客さんに「今は頼まないで!あの料理を持っていくの、きっと忘れちゃうから!」と制止しかけたほどです。
罪悪感がない
彼女にとってはそれが自然な「時の流れ」であるようでした。その証拠に、「おまたせしてすみません」といった言葉や素振りはなく、淡々と「●●定食でーす」といって提供していくのです。
全体的にのんびりした方で、手元もふわっとされていて、あとで店主さん(知人です)に聞いた話によると、味噌汁をこぼしてしまったり、備品を壊してしまったりすることもちょこちょこあるのだとか。そういうときも至ってマイペースで、慌てる様子がないそう。
俺流を貫く
マルチタスクの遂行が不得手であるという自覚は、もしかしたらあまりないのかもしれません。
オーダーを取りに行く際、メモを持っていかないのです。なぜかメモはバックヤードで取っている。でも、メモをとりに行くまでの間にまた「すいませーん、お水」などと呼び止められることがあるわけです。そうすると、もうだめ。また「ご注文はなんでしたっけ」と聞き直しに行く事態に……。
見かねた店主さんは、以前「メモを持っていって、確認してもらいながら注文を受けるようにしたら」と提案したそうなのですが、メモなしのオーダー受けは彼女のポリシーである様子。「大丈夫です」と突っぱねてしまうから悩んでいるのだ、とのことでした。
「気が利かない!」「できない!」と切り捨てるのは簡単だが
彼女と私は対照的です。
昼どきだろうとなんだろうと、己のペースやポリシーを崩さないおばちゃん。
かたや私はお冷を頼もうとするお客さんに対し、「おばちゃんはまず料理を持っていかなきゃいけないんだから!あなたが水を頼んだら料理運ぶの忘れちゃうんだから!そのくらい見てりゃ気づくでしょうに、気が利かないねあなたは!!」くらいのことを思ってしまったのです。
それを思って身体がぐわっと熱くなって、ハタと気づきました。ベクトルは違えど、私もおばちゃんと同じくらい面倒くさい。なんなら、タチが悪いのは私のほうかもしれません。
おばちゃんは善悪や正義感など関係なく、「ただひたすらに己の道をゆく」だけの人。
私はといえば、「昼どきの定食屋を回すために!」という勝手な正義感を背負っていました。そんなことは誰も頼んでいないし、私にとっての正義であっても、お店にとっては迷惑かもしれない。でも、正義感は言い訳になるのです。「良かれと思って」。
単なる迷惑と、「良かれと思って」がまとわりつく迷惑。後者は咎めにくいし、指摘したところで言い訳されるだろうし、良いことなしです。
「気が利かない」を貫けることへの嫉妬
白状すると、気が利かない人、天然タイプの人を前にすると、イライラすることが多いです。この気持ちを紐解いていくと、「気が利かないことにイライラ」しているのではなく、「気が利かない自分を貫ける人に嫉妬」していることに気づきました。
私もまた、マイペースで気が利かないのです。それを幼少期からずっと指摘され続け、小言を言われたくなくて、必死で「気が利く武装」をして、今があります。所詮は武装ですから、気を緩めると「気が利かない」が露呈します。そして「しまった、いま、気が利かなかった!」と自分で気付いた瞬間に、与えられてきた小言の数々が蘇ってひどく落ち込むのです。
気が利かなくても許され、愛され、そのままでいられることが羨ましくて、イライラ。完全に八つ当たりです。それを自覚した今なお、ほわっとした天然さんはちょっと苦手です。般若の顔をした自分と遭遇してしまい、虚しくなる。
気が利かなくたって大丈夫なんだ、という自信がついたとき、彼女たちともふつうに接することができるようになるのかなあと思います。
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店員のマイペースおばちゃんに、罪なし。
されど「昼どきの定食屋との相性」は最凶に最悪です。どうしても人手が足りず、仕方なしにお手伝いしてもらっているのだと聞きましたが、一刻も早く相性の良い方がパートさんに来てくれることを祈ります。