2015年からアジアナンバーワン・レストランの座に君臨している「Gaggan」はタイ・バンコクにある人気レストラン。シェフのガガン氏はインド人で、インド料理をベースに様々な料理やアイデアと掛け合わさった「フュージョン料理」が提供されている。
そんな、今をときめく「Gaggan」でスーシェフ(副料理長)をしていた方のお店が2017年4月オープン。お店の場所は「Gaggan」の真向かいで、店名を「Gaa(ガー)」という。
黄色い建物がまるまる「Gaa」。鮮やかなイエローとガラス張りの外観がたまらなくおしゃれ。
店内もシンプルで洗練されている。
コースメニューは10品(2,000バーツ+サービス料)か14品(2,600バーツ+サービス料)のいずれかで、ここは「せっかくなので」と14品コースを選択(日本円換算する際は3倍で)。さらに「せっかくなので」の呪文により途中に登場するメニューにキャビアのオプション(1,500バーツ)までつけてしまった。
ワインペアリング(5種2,300バーツ)はいかがいたしますか、の段階でやっと我に返り、飲み物だけアラカルトでいただくことにした。旅の「せっかくだから」は無敵すぎて怖い。
そんなわけでいただいたのがクラフトビール。タイのビールはシンハー、チャーンだけではない。世界から様々なクラフトビールが集まっていて、飲み比べも楽しいのだ。写真の「NOMAD」はコーヒーづくりにヒントを得て作ったと紹介されていたかな……鼻から抜けるときの香ばしさはまさにコーヒー。
……なんてわかったようなことを書いたが、最初は「このビールうめえなあ」という感想しか抱いていなかったことを白状する。同席していた食の師匠たちに飲み方・味わい方のアドバイスをいただき、「鼻から抜く」覚えました。
(ところでこのビールが本当においしくて、私にとっては今回のタイ旅ナンバーワンビール。また飲みたいのですが入手方法をご存じの方がいらしたらコッソリ教えてください……)
怒涛の14品+α
前菜3種盛り(ちなみにこれはコース外なので追加料金発生、高級店に行き慣れていないのですぐ戸惑う)。真ん中の湿気たビスケットみたいなの(表現要検討…お店の方ごめんなさい)がおいしかったなあ。味噌を使っているそうで、このあとのコース料理も全体的に「発酵食」がテーマになっている印象。
2017年9月度の14品コースの内容は以下の通り。
- Chilled soup of Mango, Pumpkin and Pickles
- Betal Leaf
- Chicken Liver, Longan
- Grilled Potato Mochi
- Corn
- Cow Milk Tofu, Grilled leaves of Mustard and Pakchi Farang
- Crayfish, Khakhra
- Crab, Cauliflower, Caramelized Whey
Add on Royal Project Sturgeon Caviar 500 Baht - Khanom-La
- Pork Rib
- Caramelized Onion Bread, Homemade Butter
- Egg Fruit Ice cream, Jack Fruit, Peanuts, Thai Macadamia and Gabok
- Chocolate Crispy Pork Skin, Herbs
- Bhakarwadi, Koji Ganache
提供のたびに温和そうなスタッフの男性が丁寧にその内容を教えてくださるのだが、いかんせん私の英語力がゼロ。微笑んで見つめ合えば言わんとしていることが通じるはず……と思って見つめまくったが、ほぼわからなかった。
その前提を以てしても心奮えたお料理を数品ご紹介したい。
2品目の「Betal Leaf」は日本では馴染みがないが「キンマ」と呼ばれる植物で、「ビンロウを包む葉っぱ」というとイメージが湧くだろうか(口腔がんになる、と言われたりするのは葉っぱではなく巻いている内容のほうなのでご安心を)。これもまた味噌のようなペーストが塗られていて、いいおつまみに。
皿ではなく木に盛られて提供されるという、味覚以上に”記憶”に残る一品であったことをお伝えしたい。
こんな具合で。
向かいの席に座っている師匠の顔がちょうど隠れ、マグリットの絵か何かを見ている心地になりながら葉っぱをムシャムシャ。前衛的ってこういうものを指すんだろうか……
炭水化物好きを唸らせる「Grilled Potato Mochi」。名称からしておいしさ確定。
色鮮やかなオランデーズソースにモッチモチのPotato Mochi。かわいくて、おしゃれで、おいしい。
後半に登場した「Caramelized Onion Bread, Homemade Butter」もその名前だけでわくわくしていた。中央の包みを開けてみるとコロンとしたバターロールのようなものが現れるのだが、
Yes, Caramelized Onion!!!
玉ねぎが甘い!パンそのものも、ホンワカ甘い!バターもさわやかだ。
ところでこの包みを結んでいた紐には紙のタグがつけられていて、中を見てみると……
ジョブズの言葉が。
Think Differentしろよという天の声だろうか。他のメンバーに尋ねてみると、それぞれに異なる偉人の言葉が記載されていたそう。誰だったかを尋ねたところ、「……誰だろう……」と口々に言っていたことも書き添えておく。
Nobunaga Oda とかだったらグッときたなあ。あの名言は英語で何というのだろう。DEAD or ALIVE HOTOTOGISUとか、そういう感じだろうか。絶対違うなー、テンションだけで書いてしまったな、反省。
割と序盤に登場した「Corn」は見た目も味もいちばん心に残るお料理だった。コーンはコーンでも、ヤングコーン。これを右にあるコーン味のディップにつけていただく。
抜刀!
外側のシマシマだけでもかわいいのに、中身も同じようにシマシマになっているだなんて!
このコーンディップがまた甘くておいしくて、後々の活躍を見越して秘かに手元にキープしておいたほど。そういうことは大衆食堂でやるべき、お行儀が悪い、と思いつつも残ったディップを手放せなかった。
一方、オプションの「せっかくだからキャビア(名詞化してみました)」を乗せたのはこちらの「Crab, Cauliflower, Caramelized Whey」。
ホエイと聞くとプロテインしか思い浮かばないけれど、乳清(ヨーグルトの上澄み汁)のことだそうだ。ヨーグルトとチーズソースの間のようなマッタリ感と、キャビアのしょっぱさが合う。それにしてもキャビア高いな……。
「せっかくだからキャビア」が乗った大人なお料理もいいけれど、がっつりとした肉料理も工夫があって本当においしかった!写真の「Pork Rib」は、コリアンダー、ザクロなどが乗っていて彩りも風味もとても華やか。お肉と、酸味が効いたザクロの相性が最高。甘酸っぱさが肉の旨みを引き立ててくれる。コリアンダーの香りも食欲がくすぐられて心地いい。
デザートは最後に数品提供されたのだが、写真の「Chocolate Crispy Pork Skin, Herbs」の遊び心満点の盛り付けは忘れられない。豚皮を揚げたものにチョコレートを和え、食用の花で装飾を。不思議な心地がした。
「グルメじゃない」を実感
どれもこれも外見が美しく、おいしく、大満足の全14品(+前菜)だった。同行者は皆グルメの師匠であり、「発酵」というキーワードやフルーツや野菜、調味料の名を呟きながら堪能しているようだった。
そんな洗練された料理に対し、私の感想が少年漫画の主人公のようであったことが恥ずかしかった。なぜ「このパンうめえ」「この肉うめえ」しか言えんのだ!こんな、食べてばっかりのブログを書いていると「やままさんはグルメだから」などとお言葉をいただく機会があるのだが、私はグルメなのではなく「ただの食いしん坊」です。
食への造詣が深い人は、とても素敵だ。どのお料理も本当においしかったけれど、きっと私は楽しみきれていないのだろう。もう少し丁寧に味わう練習をしないと、人生勿体ないなと思わされた一夜だった。
Gaa
営業時間: 18:00〜23:30
68/4 Soi Langsuan, Ploenchit Road Lumpini,
Phathumwan, Bangkok 10330
ph. +669.1.419.2424, +666.5.229.4422