四谷三丁目「アートコンプレックスセンター」で開催中の「久住昌之season56展」を訪れた休日。
正午を前に空腹に耐えかねた私は、駅前で昼食をとることにしたのだった。
■地上に出たら、5分でひつじ
四谷三丁目といえば、今年5月にビストロ「ひつじや」にお邪魔して以来である。
「ひつじや」は代々木店、四谷三丁目店、そして日比谷にあるカレーをメインとした「おいしいカレー工房 ひつじや」の3店舗で展開しており、地中海を臨む国々のひつじ料理がいただける。
ひつじ料理のおいしさ、おもしろさはもちろんのこと、世界のビールとワインが「原価+100円」でいただけてしまう驚異の店。
ランチも営業しているという話は聞いていたため、せっかくなので、再訪してみることにした。
行き方は、とても簡単。
丸の内線・四谷三丁目駅の1番出口を出たら、新宿通り沿いをずんずん歩く。それだけ。
※このセブンイレブンがある方に、どんどん歩いていく。
途中、出前にかなりの自信を持っていると思われるこの店の、
※「出前迅速」3連続
玉子炒めなども気になったりするが、
今日は、ひつじ!
前述の中華料理店のすぐそばに、この看板が出ているので、目印にどうぞ。
お店は建物の2階にある。
■食らえ!ひつじ
休日の正午前だが、広い店内には既に5組ほどの先客がいた。
お1人様、男性2人組、カップル、年齢も様々だった。
カウンターに案内され、すぐさまメニューとにらめっこ。
いずれも興味深い・・・そして、安い・・・。
(店先の看板では500円ランチを強調していたが、そういうわけではないようだ)
悩ましいが、ケージャンチキンやシシカバブにはお目にかかったことがある。
初対面は1番下の「マトンアサド」。
「イタリアと西インド(アラビア海アサド地方)の料理!」とのことだが、結局のところ何なのだろう。気になる。
中東方面ご出身と思われる男性店員さんを呼び寄せ、尋ねてみると、
「スパイスで煮込んだマトンが、トマトとジャガイモのスライスの上に乗っています」
との回答。
さらに、彼が持っていたスマートフォンのような端末で料理の画像を見せてくれた。
初めて見る料理で、味を想像することができない・・・。
が、そのスマートな料理紹介ぶりに胸打たれ、すぐさま「それください!」とオーダー。
はたしてどんな料理なのだろう。
■まずは、パン
数量限定とのことだが、最初にパンが出てくる。
※パンの裏面があまりにもツルツルで感激し、うっかり、裏返したまま記念撮影
添えられたオリーブオイルと岩塩をつけて、
いただきます。
油分少なめでもちもち。
あっさりしたフォカッチャ、という感じだ。
ついついこのまま食べてしまいそうだが、あとでマトンアサドなる料理の汁に浸したくなるに違いない。
ぐっとこらえて、ひと口で我慢した。
■噂のマトンアサド
それからすぐに、マトンアサドが登場。
写真を見せてもらったのに、味のイメージが湧かなかった料理が、これだ!
キャベツサラダ、コンソメスープと思われるもの、ライス、そして件のマトンアサド。
マトンアサドにさらに近寄ってみると、こんなかんじ。
店員さんの説明どおり、マトンを煮込んだものが、トマトとじゃがいものスライスの上に乗っている。
汁気がたっぷりで、ごはんおよびパンとの相性抜群ぶりは明らかだ。
ただ、タイ米ファンとしては、国産米が使用されている点が少々寂しくもあるが、これはこれで楽しみたい。
マトンアサドを解体してみよう。
てっぺんは、マトンと一緒に煮込まれた玉ねぎ(だと思う)。
カットされていない鷹の爪がごろごろ入っているので、辛い物が苦手であれば、取り除きながら食べていくことをお薦めする。
スパイスの香り・味がしみ込んでいて、気分は一気に西インド。もちろん行ったことはない。
玉ねぎを食べ終えると、マトンが登場する。
写真の通り、大き目のスライスである。
歯ごたえは、なかなかしっかりしている。
スパイスでよく煮込まれているからか、臭みは気にならない。
この下にあるのがトマト。
ぶ厚めのスライスが嬉しい。
形が崩れていないことから察していただけるかと思うが、やや固め。
その分、トマトの瑞々しさが感じられておいしかった。
最下層はじゃがいも。
これまた、ぶ厚め。
ホクホク、口の中でぼろっと崩れるのかと思いきや、水分量が多いようで、しっとりした食感だった。
どの層も実においしい。
ただ、噛みごたえのあるマトン層を切り分けるには、ナイフを相当がんばって使う必要がある。
となると、せっかくきれいに各食材を積んでもらっているにもかかわらず、「上から順に食べる」スタイルが最も効率がよいということに・・・。
正しい食べ方を知りたい。
さて、続いては炭水化物でマトンアサドをより一層楽しんでみたい。
■炭水化物を堪能
基本の、
オン・ザ・ごはん。
そして大事にとっておいたアイツを使って、
オン・ザ・パン。
いずれも、汁が浸みてウマイ!
あとは自由演技ということで、
塩オリーブオイルごはんと、
岩塩をふりかけた「塩ごはん」をおいしくいただいた。
塩、おいしかった。
サラダとスープはおまけ程度にしか考えていなかったが、シャキシャキのキャベツにトマトがフレッシュで、小皿の料理でも最善を尽くしているところに好感が持てる。
スープはちょっと薄味で、具もほとんどない。
それでも、箸休め的に用意してもらえるのはありがたい。
■別腹始動
マトンアサドセットを完食すると、お腹もそれなりに満足。
しかしメニューの最上部に
こんな表記が。
コーヒー50円。焼きバナナ100円。
ただでさえ安いのに、セットで頼むと130円。
これは食べなければ損な気がするので、追加オーダー。
小さなデザートとコーヒーがあるのは、口直しにうれしいところ。
デフォルトで、求めてもいない小さなスポンジケーキのようなものがついていて「これ要らないから安くしてよ」と思うことはないだろうか。
「必要であれば別途注文が必要、でもものすごく安価」というのはとても気が利いていると思う。
たった100円のデザート。
ちょっとしたバナナスライスでも出てくるのかと思いきや、
※焼きバナナのデザート 100円也
大きい。
ものすごくちゃんとしたデザートが出てきた。
焼いたバナナの上に乗せられているのは、シャリシャリというシャーベット食感でさっぱりいただけるココナツアイス。
アーモンドスライスも乗っていて、その香ばしさが実にいい味を出している。
これで100円。良心的すぎやしないか。
そしてチコリのコーヒー(50円)はこちら。
カップはとても小さいが、せめて100円くらい取ってもいいんじゃないだろうか。
チコリというのはキク科の植物で、コーヒーの風味づけとしてブレンドされていたり、コーヒーの代用品として使われたりするそうだ。
※コーヒーチェーン「カフェ・デュ・モンド」ではチコリが配合されたコーヒーを提供している
チコリってなに?|カフェデュモンドとは?|ハーブ野菜チコリの入った「カフェオレ」と四角いドーナツ「ベニエ」 カフェデュモンド
ひつじやでいただいたコーヒーが、チコリブレンド型なのか、チコリ代用型なのかは確認を失念してしまったが、通常のコーヒーよりも香ばしい印象。
ミルクは最初から入っていて、飲みやすい。
私はホットを頼んだが、アイスもあるようだ。
スプーンではなく、茶道でお茶を点てるときに使う「茶筅(ちゃせん)」のようなものが添えられていたのも特徴的。
※【余談】「コーヒーを点てる」といえば藤岡弘、さん。
ありがとう、ありがとう・・・。よろしければ動画検索してみてください。
■押し付けないOMOTENASHI
とにかく安い、おいしい、居心地がよいお店だった。
見慣れないメニューに悩んだときに、サッと料理画像を見せてくれる店員さんのスマート対応。
ニコニコと感じが良い、というタイプの店員さんではないのだが、食器を下げるタイミングなども気が利いていて、気分がよい。
接客って、微笑んでいればいいってもんじゃないなあ。
海外出身の店員さんがほとんどなのだが、皆、よく働く。
同じ日本人同士のスタッフをまとめ上げることですら大変なのに、海外の方をチームとして束ね、日本人客に「気が利いているな」と思わせる接客をレクチャーするというのはすごいことだ。
デザートとコーヒーの安さ、しかも両方を頼むと微々たる割引があるのも前述のとおり。
ランチタイムは14時半で「ラストオーダー」なので、昼をとり損ねて14時過ぎに空腹に悩んだときにも頼りになる。
「押し付けないおもてなし」。
座るときに椅子を引いてくれなくても、1聞いたら10返してくれるようなコミュニケーションテクニックがなくても、居心地の良い空間、時間を提供してくれたら、それは立派な「おもてなし」だ。
(過剰な接客サービスには緊張してしまい、逆に居心地が悪くなるので、ちょうどよかった)
あまりにも満足してしまい、コーヒーをついついおかわり。
おかわりしたところで、50円しか払わないのに洗い物を増やしちゃうんだよな・・・なんて罪悪感も募る。
コーヒーをおかわりしても、760円の昼食となった。
お会計の際に対応してくれたのは、日本人の店長さんだった。
この方が店員さんの指導やメニューづくり、その他もろもろ、この店のすべてを作っているのか、と思うと、お礼の気持ちを伝えたくなってしまう。
接客マニュアルはどうなっているんですか、すごいですね、とか、なんでデザートがあんなに安いんですか、なんてことも聞いてみたくなる。
とはいえ、さすがにそんなことが言えるはずもなく、いくつもの感謝の気持ちを込めて唯一言えたのは
「とってもおいしかったです」
だけだった。
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※ADでも堀でもないです
会計を済ませ1Fに降りてくると、壁一面にこんなことが書かれていた。
漢民族がひつじを初めて食べた際に、あまりのおいしさに「羊、大なるかな!」と叫び、そこから「美」という漢字が生まれたというウンチク。
なんだか気軽に「へえ」とは言いづらいが、大満足のランチタイムだったので、次の通り、この記事を締めくくりたい。
「四谷のひつじ、大なるかな!」