2015年10月期の新アニメのひとつ、『おそ松さん』。
名作『おそ松くん』登場キャラクターたちが成長した現在の姿を描く作品です。
元祖おそ松くんをスタイリッシュにしたカワイイ見た目とは裏腹に、パロディと下ネタのフルスロットルぶりたるや、清々しさを感じるほど。
注目作品としての地位を決定づけたのは、11月5日に発表されたこのニュースではないでしょうか。
第1話がDVDとBlu-rayに収録されないことになり、dアニメ等での配信も11月12日をもって終了するというのです。
(※そんな1話がどんな話だったかは、exciteさんのこちらの記事などでご確認ください)
「1話封印は宣伝の一環なのでは」「いやいや、3話のデカパンマン騒動が気になるぞ」「六つ子のパーカーほしい」などなど、話題に欠くことない「おそ松さん」ですが、今日は私がどれだけチョロ松が好きかといったことを書こうとしているわけではありません。(パーカーほしい・・・)
「イジリ」を許す大御所たち
『おそ松さん』に限らず、姿形を変えて現代に蘇った往年の名作、最近よく見かけます。
例えば、同じ赤塚作品なら『天才バカヴォン』。
10月からの新アニメである『ヤングブラック・ジャック』。
「やぶ北ブレンド」ばりの安定感をも抱かせる「家庭教師のトライ」のCMでの『アルプスの少女ハイジ』。
ヴィレッジ・ヴァンガードなどでよく見かけるDVD「ピーピング・ライフ」も、タツノコヒーローたちのぐだぐだっぷりに驚かされたものです。
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まだまだ、枚挙に暇がないほどですが、どれもなかなかのイジられっぷりです。
「家庭教師のトライ」さんなんて、見た目がオリジナルと同じですから、もともとのハイジファンの方々からのクレーム電話にメール、相当量を対処したのではないかと思います。そしてそれは、きっと現在進行形。
版権元といえば、作品のガーディアンです。作品の世界観を守り、ファンが作品に描いた夢を守る人たちであるはず。
どの企画も好きですが、「権利元さん、よく許したなあ」と驚きます。
アボカド巻とカリフォルニアロールを受け入れる
先日、セミナーで手塚プロダクションさんのお話を伺う機会がありました。
これを書きながら、そこでのお話を思い出したのです。
海外へのライセンス展開に関するお話だったのですが、「アボ・カリ方式(アボカド巻とカリフォルニアロールを許す)」という考え方で許諾しているそうです。
日本の食文化のひとつ、寿司。「オー!ローフィッシュ!」などと煙たがられていたのも遠い昔のこと、いまやワールドワイドに愛される食べ物になりました。
その秘訣は、「寿司が各国の風土や素材を受け入れ、形を変えていったから」。すなわち、アボカド巻とカリフォルニアロールです。
手塚プロダクションさんには、手塚治虫先生の素晴らしい作品が山ほどあります。
『鉄腕アトム』『ブラック・ジャック』『火の鳥』『ブッダ』・・・しかしそれらを以ってしても、「そのままのかたちでは、世界には広がらない。長くは続かない」と考えたそうです。
名作を活かしながら新しいものをつくっていこう。
原作の切り口を増やし、その切り口に対してライセンス許諾していこう。
そんな、お寿司に倣った「アボ・カリ方式」で積極的な新展開に踏み切り、いまに至るとのことでした。
実際、海外でいろいろな形で展開されているとのことでしたし、国内においても、前述の新アニメ『ヤング ブラック・ジャック』や、浦沢直樹先生が手がけた新たな鉄腕アトム『プルートゥ』など多様な切り口を通じ、年齢性別趣味嗜好を超え、幅広くファンを増やしています。
新たな切り口をきっかけに、「元祖」に触れる方も多くいることでしょう。「往年の名作」にしがみつくことなく、どうなるかわからない不安を受け入れて挑んだからこその成果です。
さて、手塚プロさんの作品ではありませんが、冒頭にご紹介した『おそ松さん』。
12日をもって封印されてしまうパロディづくしの第1話にいたっては、番組時間の大半で「おそ松くん」の見た目すら捨て去っていました。
が、原型をとどめていなくても楽しめたのは、「ゆるがないベースがあるから」ではないかと思います。
「六つ子」という設定、「イヤミ」という存在、「デカパン」はじめ赤塚先生の独創性あふれる愛らしいキャラクターデザイン。
権利元は作品を守る者なのだ、と書きましたが、名作の世界観ってそんなにヤワじゃないのだなと思いました。過保護なまでに守られずとも、ゆるがないものを持っているという強さ。
変わることを恐れない(根っこはどうせ変わらない)
アニメや漫画だけでなく、人も「アボ・カリ方式」で生きてみてもいいんじゃないか、なんてことを思いました。
「ぜひ来て」「ぜひやってみて」と誰かに頼まれたとき、それが自分とは異質なモノやコトであったとしても、突っぱねずに受け入れてみてもいいんじゃないか。
「行ってみたい、やってみたいけど、自分のガラじゃない」なんて思わずに、飛び込んでみてもいいんじゃないか。
プライドを捨てる勇気をもつ。
「三つ子の魂 百まで」ということわざもありますが、ひとりひとりが持っている「プライドの風船」的なもののなかに、絶対にゆるがない、これだけは譲れないという核(アイデンティティ)があるんじゃないかと思うのです。
だから、「こんなの自分らしくない」と思っても、着手してしまえば、いつのまにか新たな世界と自分のアイデンティティがミックスされて、なんだかんだで「自分らしく」なってしまうんじゃないかな、と。
そして、乗り越えた先に、きっと新たな世界が見えてくる。
「自分ブランド妄想」に囚われないようにしようと思った
それにしても『おそ松さん』、くだらなくて大好きです。
変化を受け入れてくれたフジオプロさんに感謝です。
そしてそれ以上に、交渉・調整をがんばった製作委員会かどこかの誰かに、私は感謝申し上げたい・・・みなさんのおかげで私は月曜深夜が幸せです!
『おそ松さん』第1話もいよいよ見納め。平成27年10月クールを生きた記念に、ぜひご覧ください。
さて、11月も中盤にさしかかり、世の中ではクリスマスムードも高まってまいりました。
私にとっては日々平日!クリスマスってなに!という感じですが、実はおいしそうなクリスマスケーキとか七面鳥を食べることにじわりと憧れの気持ちを持っておりましたので、ここはひとつアボ・カリ方式採用で、今年のクリスマスはおいしいものを積極的に食べ、はしゃいで、「新しいワタシ」デビューしちゃおうかな・・・
とは思いませんが、大御所アニメたちの変化を受け入れる姿勢に倣って、「自分ブランド妄想」に囚われずに生きていけたらいいな。
祝・2期放送決定!