「食パン半斤サンドイッチ」が食べられる、東銀座の喫茶店「アメリカン」。
たった1度の訪問でそのおいしさに心打たれるとともに、その個性的なおもてなしにもゾッコンラブ!
前回は写真のとおりの巨大サンドイッチの感想を述べたが、本日はお店の中での出来事についてお届けしたい。
※前回の記事
■店の名はアメリカン、店の中は・・・佐賀
店に入ると驚かされるのは、壁という壁に貼りつくされた貼り紙、ポスター、絵画その他。
壁の色がわからないほどに、みっちりと掲示物に覆われている。
特に天井は、店主さんの出身地である佐賀県関連のポスターでいっぱいだ。
壁には、禁煙タイムの案内など。
喫茶店といっても、11時半~13時は禁煙なのでご注意を。
そしてこの時間帯は「飲み物単品」のみの注文はNG。
必ずフードメニューを頼まなくてはならない。
ランチタイムは完全に「喫茶店」から「サンドイッチ店」にシフトしてしまう。
佐賀ポスターに続き、上の画像の「くまちゃん座布団」からもお分かりいただけるように、店内はまったく「アメリカン」ではない。
ちなみに、ソファ席はくまちゃん座布団、個別の椅子は
みどりの座布団が敷かれている。
どの席にも、座布団。
客のお尻への、配慮。
アメリカン流おもてなしのひとつと言えよう。
そして、テーブルの上はこんな感じ。
「禁煙」と書かれているそれは、ドアストッパーのような・・・。
使えるものは使う。斬新な発想である。
これもまた、おもてなし・・・ではないな。うん、これは違う。
■気が利きすぎる店主さん「先生はうしろにも目があるんですよ!」
ここで話を「貼り紙」に戻したい。
店主さんはPCが不得手なようで、手書きの貼り紙がちらほらと掲出されているのが印象的だ。
大きな紙に、ぎっしりと文字が刻まれている。
たとえば、こう。
お知らせ
11:30~13:00までは
おのみ物だけの御注文は
受けておりませんので
あしからず御了承ください。
よろしくお願い申し上げます。
伝説のサンドイッチ店をめざして
がんばりますのでどうか皆様
応援して下さい。スタッフのレベルが
ちょっと低いので、そこはよろしくお願いします
・・・えっ。
スタッフのレベルがちょっと低いので、そこはよろしくお願いします
ええっ。
「スタッフのレベルが低いけど、そこはまあ、よろしく」というお願いを受けるのは初体験。
ここまでハッキリ主張されると、その「至らない接客」なるものを受けてみたくなる。
どんな人が働いているのだろうと店内を見渡してみれば、妙齢の女性2名とお若い女性1名。
そして店の奥の厨房スペースには、店主とその奥さんだろうか、お2人がサンドイッチをつくりながら、店内を見渡している。
店員さんはみんな朗らかで、女性客には
「食べきれなかったら持ち帰れますから、声をかけてくださいね」
などと優しく声をかけてくれる。
先にこう言ってもらえるのは、とてもありがたい。
罪悪感なくテイクアウトできるので、無理して食べて残念な思い出ばっかり・・・という事態が避けられる。
せわしなく、それでいてテンパることなくニコニコしながら動いていらっしゃる皆さんの様子は、とてもじゃないが「レベルの低さ」など微塵も感じさせない。
そんなときのこと。
私は当初、1人での訪問にもかかわらず、4人席に通されていた。
いい具合の席が空いていなかったのだ。
しかし時間が経ち、1人席が空くことに。
店員さんはすまなそうに、「ごめんなさいね」と、私にそちらの席への移動を求めたのだ。
そんな移動は至極当然のこと。
恐縮しきりの店員さんに、申し訳なくなるのはこちらのほうだった。
混んでいる店で4人席を独り占めしていることのほうが、よほど居心地が悪い。
もちろん移動を快諾し、巨大サンドイッチとアイスコーヒーとともに、新たな席へとお引越し。
さあ再び、サンドイッチ討伐!と力んだところで、先ほどの店員さんが再び目の前に現れた。
「さっきはありがとうございました。これ、サービス!」
にっこりとほほ笑む店員さんは、巨大なグレープフルーツジュースを差し出したのである。
驚いて目を白黒させていると、店主さんの采配であることを教えてくれた。
店の奥から、店主さんはしっかりとその眼を光らせているのだ。
店主さんの定位置であるキッチンの方に耳をすますと、
「あの席は3人席だから、詰めていただければすぐにご案内できる」
「●番さんのオーダーを聞きに行って」
などなど、その監督力たるや、凄まじい。
うしろにも目がついていることで有名な「学校の先生」以上の鳥の目をお持ちなのだ。
その視力を以ってすれば、並大抵のホスピタリティでは「レベルが低い」扱いにもなろうて。
・・・ううむ、これが、「アメリカン」。
伊達に31年の歴史を重ねていない。
少し恐縮してしまうけれど、サービスのグレープフルーツジュースは、やっぱりうれしかった。
気を遣われて嫌な気分になる客など、いるはずがない。
しまった、やられた。
アメリカン、大好きだ!
たとえ、その時の私にとって、グレープフルーツジュースが身に余る光栄かつ、身に余る水分であったとしてもだ・・・!
※セットのアイスコーヒー、未着手状態
ビーフシチューも気になるし、ほかのサンドイッチも食べてみたいし、必ず近日中に再訪!
すっかりアメリカンファンとなり、店を出たのだった。
※グレープフルーツジュースを狙わないように!魅惑のサンドイッチをご堪能ください