こんばんは、アカスリの時間です。
スーパー銭湯で1日中過ごすのが大好きです。最近はWi-Fiも電源もある施設が多いので、PCを持ち込んだり、Kindleを持ち込んだりして過ごしています。
なにがいいって、ほどよい空調のなかで楽ちんの館内着で過ごせるのがいい。夏は暑く、冬は寒い自宅ではこうはいきません。
スーパー銭湯で「アカスリ」を自分にプレゼント
多くの場合、そこそこお手ごろなお食事処(たいてい蕎麦をウリにしている)と、マッサージと、アカスリの施設が併設されています。
しかしいまの私(パート主婦)には、そんな豪勢な楽しみ方をする資格はありません。入館料だけで2000~3000円もするのです。
稼げるようになったらエンジョイするんだ……と思いながら、「ストイックスーパー銭湯」と称して水だけ飲んで過ごします。
館内価格160円のダイエットコーラで精いっぱいです(直前にたっぷりごはんを食べてくるので無問題なのですが)。
ところが今回は例外として、「自分にご褒美」と言い聞かせて「アカスリ」をお願いしてみました。これがすごかった。感動した。ちょっと聞いてください。
スーパー銭湯のアカスリで涙する
身体を十分に温め、予定時間にアカスリコーナーに行くと小柄できれいなおばちゃんが出迎えてくれました。
「はい、じゃあ仰向けに~」
なんて促されて、ビニールシート(青いやつじゃないですよ)が敷かれたベッドのうえに寝転がります。
ああ、そういえば結いていた髪がほどけてきたから結び直そう……と手を髪の方に持っていくと、おばちゃんはやわらかく
「いいのいいの、そのままでいてください。なにもしないでリラックスしてください」
と言いながら髪が施術の邪魔にならないように整えてくれたのでした。
目元に濡れタオルを載せられ、身体にお湯がかけられ、「痛かったら言ってくださいね」の声とともにアカスリスタート。
ゴシゴシ、ゴシゴシ……
何年もアカスリなんて行っていませんから、自分から大量の垢がでていることは容易に想像できます。
おばちゃんは「アカスリひさしぶり?けっこう出てきてる」と言いながら目元のタオルを少しどかして、腕を見せてくれました。消しゴム「まとまるくん」のカスを寄せ集めて作った灰色のあいつが、私の腕に……。
「40分のほうがいいかもしれませんね」
施術に戻ったおばちゃんから提案を受けました。シャンプー込みの30分コースをお願いしていたので、要は「延長の提案」です。価格もUPします。たまの贅沢なんだからいいじゃないかと思いつつも、ここで折れたら負けのような気がしました。
「近所なんで、またすぐに来ます!」
それらしく断ると、おばちゃんは特に食い下がることなく「わかりました!」と一度答えたきり、また黙々と施術に励んでくれました。
……のはずが、1分も経たないうちに
「じゃあシャンプーはやめて、そのぶんアカスリにするのはどう?」
どれだけ私の身体には垢がたまっていたんだと思いつつ、うれしい提案に二つ返事で「ぜひ」とお願いしました。
「よかった、そうしましょう。シャンプーは自分でもできるもんね」
濡れタオルで覆われた私の目から、なぜか、涙があふれました……
言い方がめちゃくちゃやさしかったんです。おそらく韓国ご出身の方だと思うのですが、ちょっぴり訛った発音がまた、あたたかさや丸みを帯びていて。
追加料金を払わない選択をしたケチンボな私に対して、最良の施術をしようという気遣い。もしかしたらこの流れはマニュアル化されているのかもしれないけれど、私には沁みたのです。
これがまことのおもてなし
そこから30分たっぷりアカスリをしてもらいました。「横向いて」「うつぶせに」だけ指示されるも、ほかは一切会話なしです。
「痛かったら言ってね」も最初に一度言われたきりで、何度も何度も尋ねられるようなことはありません。
私は肩にけっこうなケロイドを飼っているのですが、そこも容赦なくゴシゴシ。日本の方だったら「ここ大丈夫ですか?」「痛かったら言ってください」とひと声かけてくれそうなものですが、無断でゴシゴシ(痛くないので問題なし)。
畑で採ってきたばかりの泥まみれのゴボウが、磨かれて白くなっていく映像が脳内で再生されました。私の身体はまちがいなくきれいになっている……!
とくに屈強そうでもないふつうのおばちゃんなのに、その手はパワフルに休むことなくずーっと動き続けています。これがまたとても好ましかったのです。まさに、私が求めていたオモテナシ!
いいんです、事あるごとに声かけられなくても。
いいんです、いちいち「やまま様」って様付けで呼ばれなくても。
いいんです、「やまま様はお正月どちらに行かれていたんですか?」なんてまったく興味なさそうなこと聞いてくれなくても。
無言、最高!!!!!
ケロイドの件だってそう。最初に「痛けりゃ言ってくれ」と言われているわけですから、そのとおりに、痛ければ「痛い」と言いさえすればいい。いちいち断りを入れてくれなくていい。
お尻やらなんやらを磨かれながら、人と人とのコミュニケーションのあり方のことなどを考えてしまった。過剰な気遣いはモテナシに非ずなんだ……
最後に顔を洗ってくれるというので目元のタオルを外すと、おばちゃんは初めてムダなことを口にしました。
「えーッ、その眉毛、自毛? うらやましい!」
……長さ2cmを誇る「まつげ」はよく褒められるのですが、眉毛にフォーカスされたのは初めてのことでした。唯一の発言がこれって、最高に愛おしい……。
落ち込んだら、騙されたと思ってアカスリ受けてみて
施術がすべて完了するのが残念になるくらい、すばらしいひとときでした。
泥ゴボウが白ゴボウになっていくように、私の気持ちもきれいに磨かれているような気がしてきました。変なマッサージやエステで上滑りする言葉のオモテナシをされるより、アカスリに行ったほうがいいと思った。
落ち込んでいるときに行ったら、きっともっと泣いていただろうと思った。こすってもらうのは身体だけなのに、心までもが磨かれてしまうデトックス効果。
最後におばちゃんの名前を伺って、館内アンケートにおばちゃんへの感謝の想いを熱く書いて投函しておきました。(抽選で賞品がもらえるそうです。当たるといいなー)
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▼ポッドキャストでも話しました