この度訪れたのは他でもない、我が国が誇るホテル・オブ・ホテル、「帝国ホテル」のバイキングである。スキージャンプのレジェンドが葛西なら、ホテルバイキングのレジェンドは帝国なのだ。
- バイキングの歴史はここから始まった
- なぜ「バイキング」と呼ぶのか
- 帝国ホテルの「名付け親になりたい」欲がすごい
- 帝国ホテルの”俺様キャラ”にグッとくる
- 「インペリアルバイキング サール」ディナーの部へ!
- 感想総括
バイキングの歴史はここから始まった
レジェンドたる所以の1つは、日本で初めて「バイキング」というスタイルを取り入れた「歴史の重み」にある。
その歴史は1958年8月1日にさかのぼる。
当時パリで北欧の「スモーガスボード」なる料理を学んでいた帝国ホテルのシェフがその文化・技術を日本に持ち帰り、スタートさせたのだという。
大辞林によれば「スモーガスボード」とは
〔スモーガスはバターつきパンの意〕 スウェーデン料理。魚・肉料理,サラダ,飲み物などを何種類も卓上に置き,各自が自分で取って食べるもの。いわゆるバイキング料理の原型。
とのことだが、もともとはサンドイッチなど、前菜を楽しむためのものだったそうだ。
店名はもともと「インペリアルバイキング」であり、「インペリアルバイキング サール」となったのは、2004年のリニューアル時のことだそうだ。
サール、すなわち「塩」。調味料の中で最も大切な要素ということで名づけられたそうで、この、腑に落ちるんだか落ちないんだかわからない感じにキュンとする。
なぜ「バイキング」と呼ぶのか
海外では食べ放題スタイルをにbuffet(ブッフェ、ビュッフェ)と呼んでおり、「バイキング」というのは帝国ホテルが名付けた和製英語だ。
スモーガスボードスタイルの料理提供をはじめるにあたり、当時(1958年)の人気映画で、北欧を荒らした海賊たちの生涯を描いた『バイキング』という作品に着想を得たそう。
リンクする要素は「北欧」しかないと思うのだが、海賊たちが勢いよく肉や魚を食べる様子が、スモーガスボードの「あれこれ選べる」というスタイルに重なったのだろうか。
そのため、当時のメニューの表紙には船のイラストが描かれていた。いまもそのイラストは、店の前の待合スペースに飾られている。
イラストの上にある液晶モニターからは、絶えず、このバイキングの素晴らしさを伝える映像が流れており微笑ましい。
※参考:公式サイト内「バイキングの歴史」*1
帝国ホテルの「名付け親になりたい」欲がすごい
帝国ホテルはスモーガスボードスタイルに「バイキング」と名前をつけただけでは飽き足らず、レストランを冠するものとして
ブフェレストラン
を名乗っている。
公式サイトの一文*2をご覧いただきたい。
”バイキング”発祥の帝国ホテルのブフェレストラン インペリアルバイキング サールは、日本で初めて“バイキング”という食のスタイルを生みだした帝国ホテルのブフェレストランです。 ダイナミックなロースト料理や焼きたての香ばしいパイ料理などを、経験豊かなシェフがお客様の目の前で仕上げ、ご提供いたします。
昼は日比谷公園の美しい緑を、夜は東京の夜景を望む店内で、大切なご家族、ご友人とのかけがえのないひとときをお過ごしください。
▲ロビーに設置されている、レストランフロアガイド
とにもかくにも、俺たち帝国がブフェっつったらブフェ!なのである。
俺たちが歴史をつくったんだ!ウンチクを聞けーい!というスタンスがそこかしこに垣間見える。帝国ホテルを「俺様系ホテル」として擬人化して薄い本でも売ってみてはどうか(同人誌作家さんたちへのご提案)。
帝国ホテルの”俺様キャラ”にグッとくる
帝国ホテルの俺様感はほかにも。地下アーケードのトイレを借りようとロビーフロアから階段を降りたところ
目立つところに「日本で最初のアーケード」というタペストリーが吊る下げられていた。おっしゃるとおりです、すごいです、帝国様。
階段を下りるとかわいらしいアーケードマップが。よく見てみれば、やれ「マリリン・モンローが愛した」だの、「チャップリンが訪れた」だの、愛らしいイラストに隠されたオラオラ感、強烈な自己アピール感に満ち溢れているので必見。
「インペリアルバイキング サール」ディナーの部へ!
前置きが長くなってしまったが、いよいよディナータイム訪問レポートへ。
店が入っている本館17Fからは日比谷公園を見下ろすことができ、都会の夜景を堪能できるのもうれしいところ。
入店早々、あまりに巨大な食べ放題スペースに驚かされた。
写真にしっかり写っているのは前菜・メインディッシュのスペースであり、隠れた奥の方にはデザートの食べ放題スペースが別途存在する。
周囲には、列を整備するためだろうか、ロープのようなものが点在しており、さながらディズニーランド。ここは、食べ放題の、遊園地やァ~!
テーブルウェアはこんな感じで、薄いサーモンピンクのマットがとてもかわいらしい。
フォーク、ナイフに加え、箸が添えられているところがすてきです。
前菜系
カメラに前菜ゾーンが収まりきらない。鮮やかな前菜の数々がズラリと並び、このエリアだけで「ブフェ」に殴られた気がする。
スモーガスボードを日本に持ち帰って来た1958年は、この前菜ゾーンにある料理が中心に提供されていたのかもしれない。「帝国ホテル伝統のポテトサラダ」なる品もこのゾーンに配置されており、その歴史を垣間見た気持ちになる。
ポテトサラダは関心の薄いメニューのひとつだが、「伝統の」という3文字だけで途端においしそうに見えてしまうから不思議。ついつい、たっぷりと皿に盛ってしまった。
少し進むと温かいお料理のゾーンに。魚料理が2品あった。
写真は2品のうちのひとつ「石巻産 白身魚のサルティンポッカ風マルサラソース」。なんのこっちゃ。
その横にはライブキッチンスペースがあるのだが、なんと撮影を失念。「浅利と白身魚のニューバーグソースリゾーニ添え」「エスカルゴの香草クリームソース」と、あと1種あったのだが痛恨のミスでメモをし損ねた。
食べたいメニューをシェフに伝えると、その場であたため、小さな片手鍋のような容器に入れてくれる。私はエスカルゴをお願いした。
▲手前の皿は、前菜コーナーの「グリーンピースのフランとマグロの燻製」
もっともっと盛りたいのだが、意外にも皿が小さく、まずは前菜コーナーで集めた品々で1巡目を堪能することにした。
左上にちょこんと乗っているのは「オーロラソースのテリーヌ」。左手前、レンズ豆がふんだんに混ぜ込まれているのが「チキンとレンズ豆のサラダ ターメリックソース」。その隣の赤みがかっているのが「ビーツとグリル野菜のマリネ カッテージチーズ添え」。
ホテルバイキングとシズラーにビーツは外せないようだ。外国人が好む野菜なのだろうか。
続いて「キスのエスカベッシュ」「シーフードサラダ カプリ風」。カプリについては存じ上げないため、カプリ感を再現できているか否かについてはわからない。いずれもおいしいが、「ここじゃないと食べられない」という印象が薄い品々なので、選ばなくてもよかったかなと少々後悔もした。
あとプルーンっぽいものがあり、好物なので取ってきた。ドライフルーツがいろいろ置かれているのはとてもうれしい。
そして左上「真鯛の海藻蒸し ソーテルヌワインソース」。これはディナータイムのみのメニューのようで、海藻と一緒に食べるとおいしい。
その下が例の「帝国ホテル伝統のポテトサラダ」(出た、伝統!)。見た目も味もとてもオーソドックスで、かえってそこに「伝統」を感じる、ポテサラファンならたまらない一品だった。
メインディッシュ
メイン中のメインはローストビーフだろう。
好きなだけ、切ってくれる。
目の前に並んでいた男性は臆することなく「3枚」と依頼していたが、脂身もそこそこあったので、女性はまず1枚で様子を見てほしい。
その隣には揚げ物コーナーがあり、
パングラタンやハッシュドビーフ、写真はないがブイヤベース、ピラフ、パスタなど、主食系もずらりと並ぶ。
実はカレーもある。「小エビと二色ピーマンのココナッツカレー」「野菜たっぷり 伝統のビーフカレー」の2種。
こじんまりとした器に入れてくれるので、「食べられるかな」と不安になっても大丈夫。フライドオニオンやニンニク、変わりどころではバナナペーストなどのトッピングも置かれており、カスタマイズして「マイカレー」を楽しむことができる。
ほかにも、「夢のチーズゾーン」や
ドライフルーツ、 さらに生野菜などもあるが、そのあたりはここでいただかなくてもいいかなと思い、避けてしまった。
そんなエリアをぐるぐるしながら作った2巡目の皿は以下である。
ローストビーフの付け合せにカリフラワー、揚げた芋、エビフライ、春キャベツのメンチカツということで、この日最強の「攻めの1皿」となった。
どれも本当においしいのだが、エビフライとメンチカツはここで食べる必要はなかったな、とまたしても後悔した。ここでなければ食べられない、凝った料理は山ほどある。
他にもいろいろ。左下には大好きなチーズと、ドライアンズ。はちみつをたっぷりかけたチーズや、レーズン入りのチーズは実においしく、ワインといっしょにいつまでもチビチビと食べていたい。
どんなに盛っても怒られないのだから、ああ、バイキングって幸せだなあ。
その隣のごはんは季節限定物の「チキンと牛蒡のピラフ 生姜風味」はぱらっとした固めごはん。
ごはんの上の白い物は「メカジキのロースト ジェノベーゼソース」。続いて「パンと野菜のグラタン」、中央には前菜スペースから持ってきた「野菜のゼリー寄せ」などを乗せた。
パンもたくさんあったのでいろいろ盛り付けてみた。「一流ホテルのパン」と聞くとおいしそうに感じるが、ここで盛ったパンにおいては、そこまでの感動は得られなかった。
余談だが、バイキングにおけるパンのおいしさ決戦をしたらニューオータニに軍配があがるだろう。併設しているベーカリー「SATSUKI」のパンは、そのしっとり感、ほんのりした甘み、すべてに驚いてしまいお土産に買って帰ったくらいおいしかった。
デザート
締めくくりは怒涛のデザート。何も言わず、鮮やかな甘味の面々をご覧いただきたい。
ここから厳選してきたのがこちら。
アップルパイ、いちごタルト、クッキー3種とバウムクーヘン。
どの料理もすべておいしかったが、ベストはアップルパイだったかもしれない。たっぷりとリンゴが入っており、とてもジューシー。
イチゴタルトも酸味と甘味が絶妙で、タルト地がしっかりと固いところもうれしい。
クッキー類も全部おいしく、要は焼き菓子がおいしすぎる。
ああ、このことがわかっていたら1番最初にケーキたちをたべ、その後おかずに移ったのに・・・悔やまれる。
感想総括
1)料理が多すぎるので注意
最初は食べ放題スペースをぐるぐるまわって戦略を立てるべし。
どれもおいしいが、特においしい「甘味」スペースを攻めまくってから、食事に移るのが得策と思われる。
2)意外とウンチクがない
あれだけ歴史について熱く語り、よそは知らんがうちはブフェなんじゃゴルァ、とか言っていたくせに、大変「普通」の食べ放題だったのである。
食べものに添えられているメニュー名の紙に、いちいち「コエンザイムQ10が含まれており美容にも・・・」といった豆知識が書かれているとか、各テーブルに「バイキングの歴史」なるリーフレットが置かれているとか、そのレベルの「愛しいウザさ」を期待してしまったのだが、大変上品なビュッフェ、否、”ブフェ”空間だったのだ。
インペリアルバイキング サール。
ここでディナーを楽しもうとすると、平日で8200円、休日で8700円という大変な金額となる。少しでもお得に楽しみたいのであれば、インターネット予約がおすすめだ。
こちら⇒インペリアルバイキング サール (THE IMPERIAL VIKING SAL) - 帝国ホテル 東京/ブフェ [一休.com レストラン]
ありがとうございました!
なぜ私ごときがこんな聖地に舞い降りることができたかといえば、従姉妹(美人歯科女医!)が誘ってくださったから。
「ブログをいつも読んでいるから」
という理由だけで・・・すてきなひととき、ありがとうございました。
これほどまでに、生まれ変わったら歯科医になりたい、と思ったことはありません。(あまりに算数ができないので、輪廻転生5回分は必要そうですが)
遠方にお住まいなので、何よりも会えたことがハッピー。ブログを書いていてよかった、としみじみ思う1日でありました。
※2017年7月追記※
ランチタイム訪問を果たしました!その時のレポートは下記リンクをご参照ください。