選挙終了、自民党圧勝の朝である。
さて、視線を食のシーンに移してみれば、そこはさながら二大政党制の世界。
ごはん党、おかず党。
私はおかず党に票を投じている。
(さすがに無理のある表現だったと反省)
本来であれば白米・パン・麺といった炭水化物に目がないのだが、「費用対効果」ならぬ「カロリー対満足感」という観点では、効率が悪い。
「おいしすぎて、食べだすと止まらない」中毒性まで備えている。
満足いくまで食べれば、あっという間に1000kcalくらいは摂取できてしまう。
食べだすと止まらないならば、食べ始めなければいいわけで、自宅での食事や昼の弁当は、なるべくおかずのみで済ませている。
(それでも炭水化物の誘惑に勝てないこと、多々あり)
そんな生活に立ちはだかる壁といえば「サクッと外食で済ませたいとき」の店選びである。
ファストフード店といえば、ハンバーガー、サンドイッチ、うどん、そば、丼ものであり、サイドメニューもポテトやナゲットといった揚げ物が主流である。
どうせカロリーを摂取するなら、きちんとした外食のとき、味わう余裕のある食事のときにしたい。
されど、
「ああ、高野豆腐が食べたい」
「ああ、白和え食べたい」
「ああ、筑前煮」
そんな想いに応えてくれるファストフード店は今のところ存じ上げない。
強いて言うなれば居酒屋か。
しかしお酒というのも炭水化物同様に「カロリー対満足感」が低く、「サクっと外食」タイムでは敬遠したいところだ。
長居しないとなれば、ファミレスも割高に感じる。
結局のところ、スーパーの総菜コーナーで安売りされているものを買って帰ることになるのだが、最近「閉店間際のデパ地下」という技を覚え、チャンスがあらば行使してやろうと日々ソワソワしている。
※冬はおでんという選択肢もあり
■銀座のデパ地下に アタックチャンス
その日は19時前に銀座にいた。
銀座の百貨店といえば三越であり松屋。
マイブームとして「デパ地下漁り」が到来するまで、その二大百貨店の食料品売り場になど、訪れたこともなかった。
接待の手土産をそそくさと購入しに行くくらいだ。
そして、そういう場合の「粗相のない品選び」は事前リサーチを済ませているもの。
お目当ての店にまっしぐらなわけで、フロアをじっくり見まわし、吟味し、楽しんで歩く余裕などひとつもなかったのだ。
それが今、19時前、仕事も終了。
せっかくなのでスポーツジムに行こうと予定していたのだが、そこには飲食可能なラウンジが併設されている。
よし、ここはいざ、生まれて初めての銀座惣菜漁りの旅へ出かけてみよう。
デパ地下チャンスだ。
そしてジムのラウンジでおいしい惣菜をいただく。
これもまたひとつの銀座メシと言えよう。
■三越へ
食料品売り場は地下2階。
エスカレーターを下りながら、徐々に気持ちが昂ぶっていく。
眼下に広がる怒涛の菓子!惣菜!弁当!
普段行く地元の大型スーパーやショッピングセンターとは訳が違う。
とにかく美しい。
お馴染みだったはずの崎陽軒やRF1ですら、なんだか高級店のように見えてくる。
※こちらがRF1です
ROCK FIELD CO.,LTD. - RF1 - アール・エフ・ワン -
そのせいだろうか、どこもかしこも一切の割引がない。
時間は19時をまわった。
おかしいな、と思いスマートフォンで閉店時間を調べてみれば、やっぱり20時までだ。
それなりに売れ残りもある、足の早そうなものもある、営業時間はあと1時間、それでも、割引なし。
地下3階には鮮魚・精肉などのコーナーもあるので訪れてみたが、かろうじて、刺身類が値引きされている程度だった。
衝撃である。これがGINZA。
せめて刺身だけでも買って帰ろうかと思ったが、ジムのラウンジまで刺身を運搬する気持ちになれなかった。
ラウンジで刺身を広げるのも、ちょっと、ねえ。
つまるところ、私の来るべき場所ではなかったのだ。
ブルジョワジーの香りただよう建物の1階から背を丸めて外に出ると、入り口にそびえ立つ三越ライオン像が私に冷たい視線を送っていた。
かの有名な大西ライオンさんは「心配ないさ」と励ましてくれるのに!
同じライオンでも大違いである。
■松屋へ
ジムの近くにはコンビニもある。
そこで買い物を済ませてしまえばよいのだが、私はまだ諦められなかった。
銀座はそんなに冷たい街じゃないはずだ。
※「あったかい銀座」代表店
少し歩いて、松屋銀座へ。
エヴァンゲリオン展、くまのプーさん展、ムーミン展などなど、催事場にしか訪れたことのないデパートである。
半ば諦めの気持ちを抱きながら、食料品フロアである地下に向かう。
何事も「やや諦め」「ややネガティブ」な気持ちでいたほうがよいのだ。
期待など簡単に裏切られるし、予想外のラッキーの方がお得感がある。
エスカレーターで降りてきた私を出迎えてくれたのは、すてきなパン屋さん。
これまた、ビタ一文、マケられていない。
時刻は19時をとっくに過ぎている。
20時に閉まるのに、この有様。
やっぱり、近所のパン屋とは大違いだ。
せっかくなので、観光気分でフロアを一周することにした。
パン屋さん、チーズ屋さん、紅茶屋さん・・・ダメでもともと、という気持ちで歩く私の視界に再び入ってきたのが、三越でもお目にかかったRF1。
またお前か。赤青緑のロゴマークが眩しい。
三越での衝撃、忘れてなるものか。
渋谷東横のれん街では優しく微笑んでくれるあなたも、銀座では冷たくなってしまうのだわ。
しかし近視の私がRF1に近づいていくにつれ、赤い楕円のステッカーが眼中に入ってきたのだ。
「フライ全品10%引き」
なんと!!!
たかだか10%だが、銀座においては大きな一歩。
視線を少しスライドしてみれば
「サラダ全品10%引き」
これは!!!
RF1さん(ここから敬称をつけることにする)1店だけで決めつけるのは性急だが、なにか匂う。
三越にはなかった温かい匂い、気さくさを感じる。
とぼとぼとした足取りが俄然シャキッとしてきた。
ずんずん奥に進んでいくと・・・あるある、割引ステッカー。
サンドイッチの名店、メルヘンさんも50~100円引き。
デザート代わりにフルーツサンドを買って帰るのも良さそうだ。
中華まんのお店も、既にふかしてしまっているものだけ半額になっていたように思う。
そう、そうだよ、そういうことだよ。
蒸してしまった肉まんを明日売ることはできまい。
三越では見ることのできなかった光景が広がっている。ここは銀座なのに!
さらに奥に進むと、エスニック料理のお惣菜屋さんが目についた。
なるほど、そういうのもあるのか。
興味を惹かれて近づいてみれば、店頭の小さな立札には
「どれでも3パック1080円」。
・・・目を疑った。
眼下に広がる数々のエスニック料理。
1パック500円を超えているものもあるが、いいのか、その価格設定で。
さらに奥には中華料理屋さんや和惣菜屋さんも控えていたが、私はこのタイ料理屋「チャンロイ」さんの前で動けなくなってしまった。
生春巻、パッタイ、トムヤムから揚げ、グリーンカレー・・・目移りする。
3パックに絞り込みたいのだが、魅力的なものが多くて悩む。
あまり食べ過ぎるとジムで動けなくなってしまう。
数分悩んだのち、
- 春雨炒め(519円)
- グラタンのようなもの(ガパオチーズ巻き、だそうだ。486円)
- ゴーヤとカボチャのチャンプル(484円)
を購入することにした。これが、1080円!
たかだか数百円のことなのだが、なんなのだろう、この快感。
世間の安売り好きオバチャンたちに訴えたい・・・「我も同志なり」。
松屋銀座と書かれた紙袋に入った惣菜たちを受け取った瞬間の、満足感。
松屋さん、ありがとう。チャンロイさん、ありがとう。
そうそう、ジムのラウンジでおいしくいただくためにも、お箸をいただくことは忘れないようにしたい。
いちおう他店も覗いておくか、と引き続き食料品フロアの散歩をしてみれば、チャンロイさんの隣にある中華料理屋・好好亭さんも3パック1080円制度を採用中。
通路を挟んで向かい側にあるお寿司屋さんも、銀座とは思えないフレンドリーな値引きをしていた。
■ここは銀座なのか?
もう少しでフロアの最奥、というところに見えてきたのが、テーブルと椅子だった。
※イートスペース 店内でお買い上げいただいたお品物を、こちらでお召し上がりください。
※モザイク処理力には目をつぶってください
値引き済みの弁当やインスタントみそ汁も販売されており、ペットボトルのお茶なども販売中。
すごい、すごすぎる。
電子レンジがないので温めることはできないが、ごみ箱が併設されているので、ここで食べてしまえば、
- 移動中に持ち歩かなくて済む
- 空き容器もこの場で処理できる
すばらしい!
パパッと食事を済ませる分には、最高によい場所だ。
銀座とは思えない、そっけないロケーションも実に好ましい。
フロアの最奥にこじんまり、机と椅子だけ。
無駄におもてなししない、この感じ。
地元のショッピングセンターにいるような心地だ。なんだかほっとする。
早速、購入したばかりの惣菜を広げ、いただき始めた。
・・・うまい。
「ガパオチーズ巻」は温めてチーズを溶かした方がおいしいのだろう。
しかし、冷たく固いままというのもまた一興。
私が黙々とタイ料理を食べている横に、マダム2人組がやってきた。
「おいしかったら、もう1回買いに行こう」
なるほど、試食の場としても使えるわけか。
その後は単身の背広姿のおじさんが着席。
お寿司屋さんで購入した海苔巻をがつがつと食べ、去っていった。
このイートインスペースを使いこなす、手練れ感。
長きに渡り、銀座で働いていらっしゃるのだろう。
いいな、かっこいい。(・・・そうか?)
※完食
程よく満腹感を得たので、いざ、スポーツジムへ。
本当は運動などしたくないが、食べることがやめられない以上は仕方がない。
カタルシスを得るための儀式なのだと思い込みながら足を運べば、月1回の休業日だった。
運動がわりの散歩ついでに三越に戻れば、さすがに閉店間際のセールをやっているかもしれない。
でも、寒い。
すぐさま電車に飛び乗った私、今年の冬もデブまっしぐらである。
動かないとなあ。