言いたいことやまやまです

2022年2月に出産した1985年生まれの主婦です。資料作成が好き。

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電車のなかでお腹が痛くなったとき、やっていたこと

 就職活動の面接が本当に苦手でした。

 優等生である自負はあったものの、そのぶんなにもトガっておらず、PRできるような自己がなかったのです。これまではそんな私をイイコイイコと撫でくりまわしていた世界はどこへいったのかと思う日々。なぜみんなそんなにも、日本を縦断したり横断したりしているのか。なぜそんなにも団体を立ち上げているのか。

 

 しかしそれ以上に「ああ~、いま、フルイにかけられているなあ~」と感じさせられる多々の質問に対し、気の利いた回答ができない自分が嫌でした。

 IPPONグランプリだったら終始にわたって顔丸出しです。笑点だったら山田くんに無視されることでしょう。ところでみんな気軽に「山田くん」って呼ぶけど、山田隆夫さんはもう65歳(2022年8月8日時点)だからな、覚えておこうぜ。

 

 さて、嫌な質問の代表格は「人生最大の失敗、ピンチは何でしたか? どう乗り越えましたか?」といった「あなたのリカバリーセンス、聞かせてもらおうじゃないか」タイプのものでした。

 なにせ優等生で生きてきたのです。人生のモットーはリスクヘッジ。小ピンチは多々あれど、IPPON奪取できるようなピンチエピソードなどありません。

 それを正直に白状したところで、つまらなそうな顔をされたり、「ほんまかいな」「無自覚なままミスする奴に違いない」という疑いの目を向けられたり、散々な目に遭うでしょう。

 だからたいていは、小学生のころに読書感想文で鍛え上げた「ひとつの事象をモリモリにして熱く語る」テクニックで、ケチ家庭の希釈カルピスのごとき薄さの話を披露していたように思います。

 

 そんな私もすっかりアラフォーとなり、就活時代から15年くらい経ってしまいました。背伸びして薄い話をするくらいなら、ネタとしてはショボくても、もっと実感のこもった話をすれば(落選するにしても)楽しいひとときを過ごせたかもしれないな……と後悔できる程度にはオバサンになりました。

 実感にあふれた、心底辛かったマジのピンチ話。それは多くの人にとって「電車内での腹痛」ではないでしょうか。ねえ、だって、あんな辛い体験、ある? たしか『ちびまる子ちゃん』にも、絵の表彰式という大舞台でトイレに行きたくなってしまったエピソードがありました。

 

 私の場合はどう乗り越えたかというと、(みなさんきっと同じでしょうが)初手は「腹との対話」です。初詣のときと願い事があるときだけ神を信じる人々と同じように、このときだけ、己の腹には人格があると信じて疑わなくなります。

 まずは日々の働きに対するねぎらいから。切羽詰まっているので挨拶そっちのけで媚びへつらいから始まりがちでした。

 「いつも本当にありがとうございます、あなたのおかげで私はいつもおいしいものを食べることができています、元気にさせてもらっています、本当にありがとうございます……」

 日々「本当にありがたい」と思っていないことが如実に現れている薄っぺらさ。これこそがマジモンのピンチというやつです。

 「あと2駅なんです、どうかがんばってもらえないでしょうか。助けてもらえないでしょうか。私もあなたを応援します。一緒にがんばりましょう、お願いします、あと2駅なんです」

 腹痛には波があるものです。スーッと痛みが引いていく感覚を察知すると、

 「ありがとうございます! その調子です、あと2駅……いや、もうあと1駅です。あとちょっとです! その調子です!!」

 となるし、また痛みがぶり返してくれば

 「お願いします、がんばってください、いまだけ助けてください……」

 となる。

 駅に着いたら(ときに途中下車もあり)、トイレに一目散! 「助かった」瞬間、腹には人格などなかったことになってしまうのだから、私は薄情な人間だと思います。ウーン、これじゃ太陽が西から登っても入社面接で採用されないな。

 

 いやいや、会社というのは、ピンチ時のダメージを最小限に食い止める創意工夫力ある人材も求めているはず。そこでアピールできるのが「トイレットペーパーで保温テク」でしょうか。

 腹が痛い、すなわち腹が冷えているということ。ならば少しでも温めておけばピンチをしのげるはず! ということで予防的に行っていたのが、「トイレットペーパーを折りたたんでおヘソらへんに置く」ことだったのです。ちなみに、パンツのゴムで挟んで固定します。腹巻きほど大仰ではない、ほんのりささやかな温もり。お腹さんへのプレゼント。 

 効果があったかどうかの記憶はないものの、小学生時代から繰り返し行っていたので、当時の自分にしてみれば意味のあることだったのでしょう。ただし激しく動くとパンツのゴムに緩みが生じ、トイレットペーパーが道端にファサッと舞い降りる可能性も。諸刃の剣です。

 

 ……いずれにせよ、トイレピンチを語れば語るほど、採用面接の場は静まり返りそうです。そもそも初対面でトイレの話をしてくるような奴ってどうなんだ。「小さな事実を大げさに話す作戦」で乗り越えようとしていた私は間違っていなかったと褒めたいです。

 そんな就活、売り手市場だったのに全く内定が決まらなくて、これこそがピンチだったのでした。もう二度とやりたくない。

 

今週のお題「人生最大のピンチ」