Amazonが「Kindle本50%ポイント還元キャンペーン」をやっていて、たくさんの小説が対象になっています。そのなかで見つけたのが、森絵都さんの『カラフル』。
生前の罪により輪廻のサイクルから外されたぼくの魂が天使業界の抽選にあたり、再挑戦のチャンスを得た。
自殺を図った少年、真の体にホームステイし、自分の罪を思い出さなければならないのだ。
真として過ごすうち、ぼくは人の欠点や美点が見えてくるようになる……。
※Amazonの書籍紹介欄より引用
「いまの自分に満足できない」を何年も引きずっている私にはとっても響く作品でした。
- 自分に満足できない日々
- 森絵都『カラフル』のストーリー展開をざっくり紹介
- 他人事ならなんでもできるのに、自分事だと慎重になる
- 「今」を全力で生きよう!人生は予定通りになんてならない
- 何者でもない私の暮らしは控えめに言って最高だった
- 何者かになりたいと足掻く姿がすでに「何者か」なのだ
- 森絵都さんの小説『カラフル』、子どもから大人までおすすめです
自分に満足できない日々
私の人生、「コレジャナイ」の繰り返しです。
コピーライターになってからエッセイストになって人気者になりたかったけれど、なれなかった。
ライブドア乙部さんばりの名物広報マンになりたかったけど、なれなかった。
ブログが書籍化しちゃうような人気ブロガーになりたかったけど、なれなかった。
困ったことはお金で解決するくらいバリバリ稼ぐビジネスマンになりたかったけど、なれなかった。
ツッコミどころもあるでしょうが、今日のところは一旦スルーしてください(笑)。
2019年に主婦になってから、早2年。
「私は何もできないダメ人間だ……」と、「いやいや、私はこれでいいのだ!」を交互にどんぶらこっこと繰り返しながら、今日も夫の庇護のもとで生きています。
直近のブログ記事も下記のとおりです。ためしに4つピックアップしてみました。
記事タイトルを見てゾッとしてください。この不安定さ、マゼラン海峡の航海の如し!
▼どんぶらこっこの様子
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ちなみに、今朝の日記でもひたすら「私はなにを求めているのだろうか……」を書きなぐっていました。万年筆のインクがいくらあっても足りねえぜ!
森絵都『カラフル』のストーリー展開をざっくり紹介
私のことを他人事だと思えない方には、ぜひとも冒頭の『カラフル』を読んでほしいのです。
1997年に発表された書籍なので、ネタバレも気にせず書いていきます。ご容赦ください。
(以下、ネタバレがおおいにあります)
本作の大きな流れを箇条書きにしました。
- 主人公(魂)は、前世で罪を犯したため輪廻転生のサイクルを外れることになる
- しかし天界の救済企画に当選
- 下界で死にかけている人間に宿り、前世で犯した罪を思い出したらOK
- クリアすれば輪廻転生サイクルに戻してもらえる
- ということで主人公は冴えない中学生、真くんとして生きる羽目に
- 真くんの性格や家族、人付き合い状況などを徐々に学習
- 借り物の身体なので、高級スニーカーを買ったり女の子をからかったりする
- 真くんを取り巻く人たちとの心の距離が近づくにつれ、この身体から卒業するのが名残惜しくなっていく
- ふとしたことで、主人公は自分が真くん本人だったことに気付く
- あらためて、真くんとして生きていく
他人事ならなんでもできるのに、自分事だと慎重になる
ラストシーンで真くんはこれからの人生に不安を抱き、プラプラという名前の天使と次のやりとりをします。
「自殺する前のこと思いだしてたんだ。そしたら、なんかまた、自信なくなった」
「自信?」
「またあそこでうまくやっていけるのか……」
なぜですか、とプラプラは顔をしかめた。
「あなたは再挑戦であんなにうまくやっていたではありませんか」
「だって、あれは他人事だったから」
主人公にとって真くんの人生は他人事だったから、のびのび振る舞って、好きなことを言って、思い切って高級スニーカーも買ったのです。
自分の正体に気付くやいなや、スニーカーを買ったことをすぐ後悔してしまう描写がまたおもしろい。
「自分のこととなると、やっぱりそうもいかないよ。いろいろ慎重になるし、不安にもなる。ケチにもなるしさ」
借り物の身体だと思っていたときは楽しく生きられたのに、これからも真くんとして生き続けると悟った途端、不安や後悔が押し寄せてきて、慎重になってしまう。
彼のその姿には、人生を充実させるためのヒントが込められています。
「今」を全力で生きよう!人生は予定通りになんてならない
起こってしまった過去を後悔して憂鬱に過ごしたり、まだ知らない未来を想像して恐れおののいたりしながら生きている人は、少なくないはずです。私もそのひとり。
- 失敗した過去が、現在の「コレジャナイ」自分をつくっている
- 現在の選択を誤れば、未来の自分が「コレジャナイ」になってしまう
こう信じているからではないでしょうか。
主人公は物語の終盤まで、過去のことを忘れた状態で、真くんの毎日をフルスロットルで過ごしました。
「いま」だけにスポットライトをあてて生きていたということです。
その結果、慎重に生きていたときにはできなかった大切な友にめぐり会い、目標ができ、家族との絆も強まりました。
その様は「暗く沈んだ過去や未来を憂いながら生きるより、いまこの瞬間を充実させながら生きたほうが人生は豊かになるよ」と教えてくれているかのようです。
何者でもない私の暮らしは控えめに言って最高だった
物語の冒頭、主人公が真くんの身体に宿ってからの視点も興味深いものがありました。
生前には家族のことを恨んでいた主人公ですが、生還した直後は記憶がなくなっているため、「こんないい家族に恵まれて、なんだって真は自殺なんてしたんだろう」と不思議そうにしているのです。
その後、家族との溝に対峙して乗り越える様子も描かれているのですが、真くんになったばかりの主人公の目には「けっこう恵まれている人生」と映ったのがおもしろい。
この感覚を自分自身に当てはめてみたくなりました。
魂状態の、過去の記憶のない私が、やままの身体に宿る感覚です。
……広いとは言えないけれど都内の便利なところに住んでいて、自分を想ってくれる家族がいて、仕事をせずともとりあえず生きていられる環境。
さらにはホットクックとヘルシオという文明の利器がある。たぶん、いろんな食材を買ってきては遊ぶでしょう。
自分専用のノートPCもKindle端末もニンテンドースイッチもある。
SNSに投稿すれば反応してくれる友人や知人やブログ読者さんがいて、週に1度は昼スナックのママなんておもしろいことができる。
見た目も、絶望するほどのブスではないと思います。おっぱいは微塵もないが。
こんな身体に宿った感想をひと言で表すなら……
「最高!!!」
「自分」でいることに慣れてしまうと、自身の価値がわからなくなってしまって、「世間」と比較しながら自分の価値を測るようになります。つまり「相対評価」です。
ところが自分の存在を「借り物の身体」と捉えると、世間と比較する余裕はなくなるはずです。自分のおかれた状況がすべて。いわば「絶対評価」です。
この感覚をたまに思い出すようにすると、不安で悩んで憂鬱になる自分を遠ざけられるかもしれないと思いました。
何者かになりたいと足掻く姿がすでに「何者か」なのだ
そして作中で他人事だと思えなかったのが、真くんのお母さんです。
中盤で彼女は真くんに長い手紙を書き、そのなかで、自分のコンプレックスをさらけ出しています。
学校や職場にいた特別な人たち……スポーツができたり、何か特技を持っていたりする人たちがいつも羨ましかった。私にもそんな何かがあればいいのに、と。いや、本当はきっとあるはずなのに、と。
(中略)
様々な習い事に挑戦していったのです。わかるかしら。これは私の挑戦の歴史であると同時に、挫折の歴史でもあるのよ。
(中略)
何も得られないままに老いていく不安と戦いながら、今度こそ、今度こそ私に適した何かと巡りあえるはずと、すがるような思いで探していたのです。それでも何も見つからないまま、無情にも年月だけが流れていきました。
お母さんが「習い事」を通じて見つけ出そうとしているものと、私が「仕事っぽいもの」を通じて見つけ出そうとしているものは同じではないかと思いました。
このお母さんはそんな自分を恥じているのですが、お父さんは「どんどん新しいことにチャレンジしていくお母さんのバイタリティに励まされた」と言っています。さらには「お母さんに好きな習い事をさせてあげられるのがうれしい」とまで。
我が家の大黒柱は飽きっぽい私にやや呆れている様子が伺えますが、それでも、大切に想ってくれている様子は同じです。
何者かになろうとあがいている姿がすでに「何者か」なのだなあ……なんてことを思いました。
森絵都さんの小説『カラフル』、子どもから大人までおすすめです
自分のことを認めてあげられない人たちと、この感覚が共有できたらうれしいです。Kindleならスマホにも対応していますし、読書が苦手な私でもサクッと読めたので、ぜひ手にとってみてください。
この作品を紹介してくれた友人は、小学生のときに読んで衝撃を受けたとのこと。親子で読んでみてもいいかもしれませんよ!